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- デジタルシフトに取り組むためのソフトウェア開発の新常識
デジタルシフトに向けた新たなエコシステムの構築へ【第7回】
継続的な開発ができるエンジニアリング組織が最終目標
今後の変化をしっかりと受け止めて、IT技術とソフトウェアによってビジネスを成長させることができる体制を、どのように作っていけば良いのかをまとめてみましょう。
(1)ITの目的に対する意識改革
まず、何のためにIT技術が存在するのかという目的意識を根本から変える必要があります。業務をより効率化しコストを削減するという従来の考え方ではなく、ITおよびソフトウェアの力によって、現在とは全く異なるかも知れない新しい事業分野への進出と成長、そして売り上げや利益を拡大していくという方向に意識を180度転換しなければなりません。
(2)ソフトウェア開発プロセスの切り替え
4〜5年に1度の基幹システム再構築のためのウォーターフォール型によるSIerへの一括外注ではなく、ソフトウェアの内製化と、継続的な改善のためのアジャイル型開発への転換が必須です。
(3)改革の推進役としての強力なCTOの採用
現時点で、(1)と(2)のような認識が社内にないとすれば、内部から改革役となるトップ人材が突然、登場することは望めません。その場合、強力なCTO(Chief Technology Office:最高技術責任者)を外部から招聘する必要があります。候補に挙がるような方々は、さまざまな場面で外部発信していたり、既存の大企業ではなくスタートアップ企業に所属している可能性が高いでしょう。アンテナを張って積極的に外部を見渡し人材を発掘すべきです。
(4)ITパートナーの発掘と強力関係の構築
現状のITパートナーである既存のSIerではなく、新たなITパートナーを探し、協力関係を作り上げます。その際に確認すべきことは、その会社がクラウドなどの新しい技術はもちろんのこと、アジャイルやクラウドネイティブ、DevOps(開発と運用)といったソフトウェア開発の新しい手法に積極的に取り組み、技術者を育てているかどうかです。
(5)エンジニアリング組織の構築
最終的には、CTOや新しいITパートナーとともに、社内に継続的な開発ができるエンジニアリング組織を構築しなければなりません(図5)。外部のベンダーをコントロールするだけの役割になってしまっている情報システム部門とは全く別の組織を作るという意識を持ち、優秀なエンジニアによる新組織を立ち上げて実力が発揮できる権限と待遇を与える必要があります。
本連載は今回をもって一旦、筆を置きます。内容について、ご助言や感想をお寄せいただいた読者のみなさまに感謝いたします。筆者は今後も、日本のITおよびソフトウェア開発の状況をより良くするために微力ながら貢献しきたいと考えています。本連載がみなさまのデジタルシフトの一助になれば幸いです。いずれまた誌面でお目にかかりましょう。
梶原 稔尚(かじわら・としひさ)
スタイルズ代表取締役。慶応義塾大学卒業後、舞台俳優を志しながら、アルバイトでプログラマーになるも、プログラムのほうが好きになり、30代前半でIT企業を設立。以来、自らエンジニアとして数多くの業務系システムの案件をこなしながら、社長業を兼任する。
「最新技術やOSS(オープンソースソフトウェア)を積極的に活用することで、IT業界の無駄をなくし、効率の良いシステム開発・運用を行う」をモットーに、日々ITソリューションの企画・開発に取り組んでいる。趣味は散歩と水泳。