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ロボットは人の共感を呼ぶ存在に、テクノロジーによる課題解決こそがデザイン

ユカイ工学 CEO 青木 俊介 氏

志度 昌宏(DIGITAL X 編集長)
2019年10月9日

──子供用に開発されたBOCCOですが、市場の反応は想定通りでしたか。

 BOCCOは2015年に発売しましたが、そこで初めて高齢者向けのニーズがあることに気付かされました。高齢者の一人暮らしなどが増える中で、彼らや彼らの子ども達も安心感や癒やしを求めていたのです。社会に提供する製品やサービスは、シンプルな状態で市場に投入し、実際のニーズをくみ取りながら進化させていく必要があるでしょう。トライ&エラーでなければ分からないことが、たくさんあります。

 私は元々、Webサービスの開発をしてきたので、こうした手法に抵抗はありません。むしろ、これまでの経験で言えば、「一所懸命に作り込んだシステムほどヒットしない」ものです。

──ところで青木さんは、グッドデザインの審査員でもあります。「Society 5.0」など複雑な課題解決にはデザイン思考が有効とされるなど“デザイン”というキーワードへの関心が高まっています。

 デザインとは、「テクノロジーを使った課題解決」だからです。

 デザインと並んで使われる用語に“アート”があります。アートとは「課題の発見」です。そしてテクノロジーは課題の解決手段です。この関係は古くから変わっていません。

 ただ社会の課題は、人間が生理学的に不変なことから、本質的に大きく変わることがないのに対し、テクノロジーは急速に進化しています。結果、解決のための手段が増え、これまで解決できなかった課題にも対応できるようになっていきます。この新しい課題解決の領域で起こっているのがイノベーションなのです。

 ですので、社会課題の解決には、通信モジュールや加速度センサーなどキーになるデバイスの存在が重要です。もっともデバイスの開発者は、「高速にしたい」「小型化したい」といった動機で開発に取り組んでいることが多く、課題自体に気付いていないかもしれません。開発者が「そんな使われ方をするんだ」と驚くケースが多いはそのためです。だからこそ市場ニーズを把握するためのトライ&エラーが重要になるのです。

──最近のグッドデザイン賞では、ITサービスそのものが選ばれたりしています。
 テクノロジーが適用される領域が広がっているからです。私のようにデザインなどの専門教育を受けていない審査員が増えているのも、そうした領域での活動を評価するためです。

 ものづくりの現場でも、デザイナーとエンジニアの間にも明確な違いがなくなってきています。たとえば最近の液晶テレビなどは、画面を囲っている枠が、どんどん細くなっていますし、操作用ボタンもほとんどありません。画面にソフトウェアを呼び出して操作します。するとデザインすべきは、操作性を高めるためのUI(ユーザーインタフェース)になり、その検証は実際にソフトウェアを作成し、その動きを見ることになります。

 デジタル化が進展してきたことで、モノとしてデザインする対象が少なくなり、プログラムを書くことがデザインの仕事になっているのです。

──小学生へのプログラミング教育が義務化されるのも、そうした背景があるからでしょうか。

 プログラミング能力は有用ですが、技術力が高い人が作ったサービスが必ずヒットするわけではありません。これも私の経験からですが、ヒットするのは「自分がほしいもの」や「自分がファーストユーザーであるもの」です。具体的なニーズが自分で分かっているからです。ニーズを想像しながらデザインや開発をするのは本当に難しい。

 最も大切なのは、能力よりも思いの強さです。その意味でも、色々な場所を訪れたり、さまざまなテクノロジーに触れたりして経験を積むことが重要です。

青木 俊介(あおき・しゅんすけ)

ユカイ工学 CEO。2001年東京大学在学中にチームラボを設立し、取締役 CTO に就任。2002年東京大学工学部計数工学科卒業。2007年鷺坂と共にロボッティクスベンチャーのユカイ工学 LLCを設立。2008年ピクシブの取締役 CTO 就任し、登録ユーザー数1200万人のサービスを立ち上げる。2009年中国の東華大学信息科学技術学院修了。2011年にユカイ工学を株式会社化した。2015年よりグッドデザイン賞審査委員を務めている。

CEATEC 2019

10月15日(火)〜18日(金) 10:00〜17:00、幕張メッセ(千葉市美浜区)
  • 入場無料(全来場者登録入場制)
  • 詳しくはWebで ▶CEATEC 2019