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「空飛ぶクルマ」を疑似体験できるCEATEC TEブースの舞台裏
乗れる機体を創り出すプロジェクトを支えた2人のエンジニアに聞く〔PR〕
実機の動きを25分の1の模型を作ってシミュレーション
そんな体験アトラクションは、どのように設計・開発されているのか。CEATECのTEブースにある体験アトラクションの製作プロジェクトで中核を担うエンジニアが、前田工房の前田 保典 氏とkWorxの菊田 鉄男 氏の2人である。前田氏が企画立案から製作全体のディレクションまでを担当し、菊田氏が前田氏の提案を受けて具体的な制御機構や電気回路を設計・開発する。
前田氏は出版社の学研で科学キット『大人の科学マガジン』の開発などに携わってきた(写真3)。そこでの経験を生かし、実際に動き体験できる展示などを各所で提案している。TEのリニアモーターカーやハンググライダーなども前田氏・菊田氏コンビで提案し、動く展示を実現させてきた。今回は、TEがメインステージの実現に向けてrFlightの体験実現を両氏に依頼し、その開発がスタートした。
rFlightというテーマを聞いたときの第1印象を前田氏は次のように振り返る。
「飛行とVRという組み合わせは、2016年に作ったハンググライダーの疑似体験飛行と基本的には同じなので、実現はできるだろうと思いました。ただ、実機と異なり疑似体験デモでは、実際に体験している人だけでなく、それを見ている周囲の観客にも楽しんでもらえなければなりません。そのためには、全体をどう配置し、機体をどう動かすのかといった演出が重要になります。特に今回は、垂直離着陸という動きをどう実現するかが課題になると考えました」
前田氏は当初、油圧で機体を動かすシステムを検討した。だが最終的には、ハンググライダー同様にワイヤーで吊って動かす仕組みを採用した。水平飛行のみだったハンググライダーは左右2本のワイヤーで機体の動かしたのに対し、今回のrFlightは後部にワイヤーをもう1本増やし計3本で動かしている。3本のワイヤーをプログラムでコントロールし、機体の向きの垂直・水平の動きを再現することで、rFlightの機体の特徴である垂直離着陸を実現した。
実際の動きをイメージするため前田氏は、最初に25分の1ほどのサイズの模型を段ボール紙で作り、それを動かしながら実機の動きを確認している。今回も紙で作った機体を3本のタコ糸で吊り、タコ糸をいろいろと動かしながらイメージを固めていった(写真4)。「図面やCG(コンピューターグラフィックス)など平面で考えるよりも、モノとして触れる模型を作ったほうがイメージしやすい」(前田氏)という。
このスタイルは学研時代からのもの。前田氏は「ラジオ少年だったかつては、東京・秋葉原に行けば多くの部品が店頭に並んでいて、部品を前に『これを使ったら何が作れるだろう』といったことを考えるのが楽しかったし、それが次のアイデアにつながりました。それを今も続けているのだと思います。ただ最近の秋葉原は部品屋さん自体が減り、色々なことを考える機会が減っていて残念です」と話す。
バリエーションが増えたTE製品の選定が楽しみに
前田氏による全体構想が固まってくれば、それを実際に動く仕組みとして制御部や電気回路を設計するのは菊田氏の役割だ(写真5)。前田氏と話し合いながら、この動きを出すには、どの部品を用いるかなどを検討する。TE製品を使って再現するだけでなく、ステージが来場者の目に付くことも併せて考える。
菊田氏は「部品選びでは、TEのどの製品が最適かは、これまでの経験から大体は分かります。加えて最近は、M&A(企業の統合・買収)などで製品のバリエーションが急速に増えており、さまざまなアイデアを考えられるようになっています。何しろ航空宇宙用のパーツまであります。かつての秋葉原にあるような製品もTEのサイトに来ればなんでも揃うのです。ですので製品選びで苦労することはほとんどありません」と語る。
現在、TEのEC(電子商取引)サイトは英語版のみだが、サンプルは無料で取り寄せられる。日本国内でも同様に注文できるよう、TE自身のECサイトの立ち上げを視野に検討している。