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清水建設、豊洲スマートシティに投入する「建物OS」をCEATEC 2020 ONLINEで披露

“人の幸せ”につながるデジタルツインを構築へ

岡崎 勝己(ITジャーナリスト)
2020年10月20日

宮田 これからのビル設計やスマートシティへの取り組みで重要なことは、現実の世界をバーチャルな世界に再現する“デジタルツイン”の実現であり、当社も、そこを追求しています。人や車などの物理的な移動を仮想空間で再現し、リアルタイムにシミュレーションすることで、問題を早期に発見し対応します(図3)。

図4:都市のデジタルツインの概念

 当社は、ビルの設計に用いるBIMデータを豊富に持っています。これに、ビルからリアルタイムに収集するセンサーデータなどを組み合わせることで、現実世界をデジタルに把握し、AI(人工知能)分析により問題に先手を打てるようになると考えています。

 その具体的な取り組みを、豊洲スマートシティ内の開発案件である「豊洲6丁目プロジェクト」の周辺エリアを対象に、都市のデジタルツイン作りを3Dソフトウェア大手のオートデスクとの協業で着手しました。建物やインフラのBIM/CIM(Construction Information Modeling)モデルや広域地形モデルを使ったシミュレーションに基づき、人・モノの流れを踏まえた交通や防災の最適化を図ります。

 そのためDX-Coreは、ビル単体の管理にとどまらず、クラウドによる複数のビルや、街、さらには都市の管理までを視野に入れています。

 物理的に離れたビルをネットワークでつなげた統合管理はもちろん、周辺ビルが連携しデータを一元的に扱うことで都市のデジタルツインが実現します。扱うデータ量が膨大なため、クラウドとビルとで扱うデータを分散させる最適化も計画しています。実際、当社の関連会社では複数のビルのデータをクラウドで管理する取り組みを進めています。

自治体などとのスマートシティの意義の共有を期待

−−1棟のビルがスマートシティへつながればステークホルダーも広がっていきます。

高木 そこは大きな課題の1つです。だからこそCEATECに期待している部分もあります。今回は,自治体の課題解決をテーマにした主催者による企画エリアも設けられています。

 街づくりは、地域の住民や関係者の合意はもとより、道路などインフラの利用では自治体の協力なしには進みません。国交省などもスマートシティづくりを後押ししていますが、最終的には地場のインフラを管理する自治体の協力が不可欠です。CEATECに参加する自治体などとともに、スマートシティの意義を共有し、これからもスマート化を進めたいと考えています。

−−ところで今回のCEATECは初のオンライン開催です。

村田 明子 清水建設 技術研究所 技術広報グループ長の村田 明子です。確かにオンライン化では戸惑った部分も少なくありません。たとえば、来場者からの質問の対応でも、対面であれば話の流れの中で何を知りたいのかの見当が付きますが、チャットによるテキストベースでは、共有できる情報が少なくなることが想定できます。

 どこまで説明レベルを高められるかは最後まで試行錯誤を続けています。ただ、それも、デジタル時代のノウハウを先行して積み重ねられる良い機会だと捉えています。

高木 CEATECでは、前回以上に大きな反響を期待したいところです。加えて、オンラインで提供されるコンテンツに慣れている若手層に対し、建設業界が取り組んでいるデジタル化の内容と、その可能性を知ってもらうことで、次世代を担う人材の獲得にも期待しています。