- Column
- Society 5.0への道
竹中工務店、より「まちづくり」を意識した7テーマをCEATEC 2020 ONLINEに展示
パートナーシップ強化でニューノーマル時代への適応目指す
オープン指向でビルをアプリケーションで機能強化する
奥田 ビルコミの大きな特徴は、オープンな志向で基盤が構築されていることにあります。クラウドに蓄積された建物データをセキュリティは確保しながら、サービスを提供しようと考えている事業者が、オープンに利用できるようにしておくことで、ビルの利用者や管理会社にとって付加価値の高いサービス(アプリケーション)が提供されていくことにつながると考えています。
政井 ビルコミは2019年も展示しました。それから1年が経ち、データの蓄積も進んでいますし、膨大なデータの分析や建物設備の制御にも不可欠なAIの分析力なども高まっています。
ビルコミは、オープン志向で開発しています。将棋AIの開発で有名なベンチャー企業HEROZのAIである「HEROZ Kishin」が、建築用途のビルコミで使えるようになっていることは、その好例です。
これまでの建築業界であれば、特許で固めて他社が関与できないようにするのが一般的でした。それに対してビルコミは、スマートフォンと、それ用のアプリケーションの関係のように、さまざまな会社がビルコミというプラットフォームを利用できます。そこにサービスを素早く開発し、その利便性で勝負するという考え方です。
奥田 スマートシティに関しては最近、「コモングラウンド」と呼ばれる概念が提唱されています。京都大学のAI研究の第一人者である西田 豊明 教授(現福知山公立大学 情報学部長)らによるものです。ビルコミはビルのOSだとすれば、ビルの設計などに用いるBIMデータをベースに、ビル情報を扱いやすくしたビルOSの進化形がコモングラウンドです。“都市のOS”ともデータ連携しスマートシティを構成していくと私たちは捉えています(図3)。
政井 建築業界では、BIMデータを使って、耐震性や温熱効果の快適状況などを事前にチェックしています。しかし、そのシミュレーション結果が本当に正しいかどうかは、実際に建てたビルと、その中に組み込んだセンサーで収集したデータを付き合わせなければ分かりません。
これまではシミュレーション結果と実測値の整合性検証に、とても時間がかかっていました。コモングラウンドは、その仲立ちをするようなイメージで、常に最新の情報を集約していきます。シミュレーションも直ぐにでき、結果の反映も速い。
そうなれば、スマホのように、アプリケーションによる機能追加といったことが、ビルという単位でも素早く実行できるようになるのではと期待しています。
−−将来的には、誰もがビルや街の機能改善サービスを作れるようになるわけですか。
政井 目指すところは、まさにそこです。ビルのOSと都市のOSが連携することで、データの活用は容易になります。さまざまな立場からビルや街の機能を改善するサービスの開発に参画いただき、業界の活性化につながってほしいところです。
その際、建物のビジュアル表現にはゲームエンジンを使うことが考えられています。ゲームの世界では、3D(3次元)表現が劇的に進歩しており、設計用のCADの世界と比較しても、軽快さなどは大きな特長です。ゲームエンジンは汎用性も高く、多くの開発者にとって扱いやすいというメリットもあります。
学生を含めパートナーとのマッチングを期待
−−2020年の展示には、どんな来訪者を期待しますか?
政井 冒頭でも、お話しましたように、やはり将来のパートナーとなる方々に集まって頂きたいですね。2020年も弊社社長が講演しますが、そこでも主要なテーマはパートナー戦略です。従来からCEATECに参加されてきた家電や電気・電子関係の参加者は、建設会社の我々からすれば、普段付き合いが少ない方々なので、是非、当社の展示をみていただきたいです。
奥田 この方向性は3年前の初出展時から一貫しています。建設業に限らないかも知れませんが、デジタル化やAI、5G利用などが加速的に進化する中では、大企業でも1社だけで、すべての仕事を完結させられません。冒頭でもお話ししたように、これからはパートナー企業との共創が重要になってくると思います。
政井 2019年は学生の来訪も少なくありませんでした。「建設会社が、こういったICTを活用した取り組みをしているとは全く知らなかった」という声も非常に多くありました。
奥田 建設業界は、まだまだ生産性が低いと言われていますし、3K(きつい・汚い・危険)というイメージも残っています。今は、当社の取り組みを広く知っていただくことが重要と考えています。知っていただけないと仲間も増えませんので。