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Disruptor(破壊者)ほど顧客中心、デジタルネイティブな生活者の利便性をとことん追求【第1回】

大山 俊哉(ADKホールディングス 執行役員・グループCDO)
2019年5月30日

インターネットの浸透により、eコマースやシェアリングエコノミーなど新たなビジネスモデルが登場してきた。そうしたビジネスモデルを生み出した事業者は既存事業を破壊することから「Disrupter(破壊者)」と呼ばれる。だが彼らはデジタルネイティブな生活者の利便性をただ追求しているだけだ。その裏側では、デジタルネイティブな顧客との接点を最適にマネジメントするデジタルマーケティングの考え方が駆使されている。

 2018年10月、トヨタ自動車とソフトバンクの提携は日本中に大きな驚きをもたらした。世界有数の巨大企業であるトヨタでさえも、デジタルトランスフォーメーション(DX:Digital Transformation)の大きなうねりに押され、これまでの“自動車を作る”企業から“(車に限らない)移動手段というサービスであるMaaS(Mobility as a Service)を提供する企業”へ変革する決断を下したからだ。

 その背景には、ネットを使った「カーシェア」が普及すれば、若者は、ますます車を買わなくなる。さらに「Uber」などの「ライドシェア」も、現時点では一部地域でしか解禁されていないものの、いずれ生活者のニーズに応える形で普及してくるはずだという危機感がある。

 この提携により両社は、MaaS事業を手がける合弁会社MONET Technologiesを設立し、2019年2月から事業を開始した(写真1)。

写真1:MONET Technologiesが2019年3月末に開いたキックオフイベントに“飛び入り”で登壇したトヨタ自動車の豊田章男 社長。左はMONETの宮川 潤一 社長

 自動車以外でも、「ZOZOTOWN」などのアパレルの「eコマース」や「メルカリ」といった個人間取引など、ネット時代を象徴する新しいサービスが誕生している。キャンペーンで話題を集めた「PayPay」などのキャッシュレス決済も日本のマーケットに根付きつつある。

たった20年で“デジタルネイティブ”が誕生

 DXという大きなうねりの発端はインターネットである。インターネットが世の中に出たのが1990年代後半のことだ。それから、たった20年の間に私たちの生活は大きく変化した。

 ネットは一般の生活に浸透し、コミュニケーションの主役は対面や電話から、メールやチャットになった。世の中のあらゆる情報が「検索」だけで手軽に手に入り、「ソーシャルネットワーク」で見ず知らずの人とつながり自らの情報を発信し、eコマースで商品を買う。

 さらに、ここ10年は「スマートフォン」の普及が、その変化を加速している(写真2)。新たなオンラインサービスが数多く登場し、「シェアリングエコノミー」という言葉も誕生した。動画はテレビで見るのが当たり前だったが、スマホでも多くのコンテンツを楽しめるようになった。しかも時間や場所、環境に関係なく。

写真2:インターネットによる変化をスマートフォンが加速した。 (c) R.CREATION/orion/amanaimages

 ネットとスマホの登場で生活者の行動や習慣は大きく変化した。情報を自ら集め自由に発信し、あらゆるコンテンツや広告に、さまざまな時間と場所で接触し、購買やサービスも実店舗あるいはオンラインで自由に選べる。

 2020年代には、1990年以降に生また、いわゆる“デジタルネイティブ”がマーケットの主役になる。彼ら彼女らは生まれた時からネットが家庭に普及しており、情報感度が最も高いタイミングでスマホを手にした。

 もちろん、40代、50代の人たちもスマホやオンラインサービスは使いこなしている。だが、デジタルネイティブにはネットでの行動が生活の一部に組み込まれており、それ以前の世代とは感覚がかなり違うようだ。

 彼らが一番大事にしているのはスマホである。ほぼ24時間、自身から30センチ以内に存在し、若者の8割近くが1日に3時間以上をネット行動に費やし、いつでも・どこでも・あらゆるものを求めている。彼らの習慣そのものがネット中心に変わってしまった。そこに出現したのが、スマホやインターネットを駆使した巨大な「デジタルエコノミー」である。

 シェアリングエコノミーなどに代表される新たな経済圏やビジネスは、たった10年でできあがった。これは産業革命以来の革命とも言われる。従来と大きく異なるのは変化のスピードだ。それは2019年以降の5Gの普及でさらに加速するだろう。