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- データ活用で失敗しないための3つの条件〔ビジネス部門編〕
目的を定めデータドリブンな文化を醸成する【条件1】
データ活用への現場の期待は大きいだけに抵抗も
ただ活用シーンを描くだけでは不十分です。データ分析を適用する現場担当者が、納得感をもってプロジェクトに参加してもらえるだけの関係性や環境を作らなければなりません。
たとえば、製造現場やインフラ設備のメンテナンスといった多くの現場では、今も熟練技術者の経験や勘に基づいた改善施策が実施されています。そのような現場で、いきなりデータを活用しようとしても、データの取得に消極的であったり、分析システムを使ってもらえなかったりするケースがあるからです。
現場が抵抗する理由としては、「分析システムの仕組みが不明瞭で出力に納得感がない」「分析システムの出力が、熟練の現場担当者からすれば当たり前のことばかりで利用する価値を感じられない」などが挙げられます。
その背景には実は、現場の担当者が分析に過大に期待しているということがあります。それだけに、データ活用で劇的な結果がでないと、熟練者から見れば分析の結果は当たり前の結果が出たに過ぎず「役に立たない」と思ってしまうのです。
現場に納得感を持ってデータ分析に取り組んでもらうには、分析システムに現場の経験や知識といった要素を取り込む必要があります。多くの場合、分析対象になるデータは、業務全体で扱っている情報の一部でしかありません。現場担当者にヒアリングし、データにない情報を補完したりデータの見方を変えたりすることで、現場担当者の経験や知識を取り込んだ分析になります。
また分析結果が熟練者には当たり前という点については、業務プロセス全体の観点からデータ分析の価値を現場担当者に丁寧に説明しましょう。具体的には、データ分析により、熟練者と同じ判断・作業を、より多くの担当者が、より早くこなせるようになることが、現場全体にどれだけ大きな価値をもたらせるかといったことです。
データサイエンティストも現場に出よ
現場に納得感をもって取り組んでもらうためには、データを分析するデータサイエンティストがドメイン知識を持っていることも重要です。データサイエンティストといえば、統計学や情報処理のスキルばかりに目が行きがちですが、業務プロセスや製品の特性を知らなければ、適切なデータ分析はできません。
たとえば、図2のような設備の稼働データを分析するとしましょう。そこでは、設備メンテナンスのタイミングや異常時の振る舞いを知らなければ、センサー値の変化が業務によるものなのか、異常動作によるものなのかを区別できず、適切な分析はできません。
加えて業務プロセスの知識があれば、分析結果が現場の意思決定にどのようにつながっていくのかがイメージしやすくなります。データを活用する現場を知ることで、現場担当者が活用しやすい分析結果を、現場担当者目線で検討できるようになるのです。データサイエンティストも現場に入りドメイン知識を身に着ける必要があります。
ただデータサイエンティストの主業務はデータ分析ですので、業務のプロになる必要はありません。ドメイン知識を持つ現場担当者に分析に必要な質問ができる程度の知識を身につけましょう。データの分析結果をアクションにつなげるために、現場ではどのような意思決定がなされているのか、どんなアクションを起こせるのかという知識を持っていることが大切です。