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- データ活用で失敗しないための3つの条件〔ビジネス部門編〕
目的を定めデータドリブンな文化を醸成する【条件1】
チーム全員が当事者になりデータドリブン文化を醸成する
このようにデータ活用プロジェクトでは、ビジネスサイドやデータサイエンティスト、現場担当者など、それぞれの専門領域を持つメンバーが集まりチームを組まなければなりません。互いの専門領域が異なるため“壁”を作りがちですが、それぞれの専門領域を相互に理解することがプロジェクト成功には不可欠です(図3)。
さらに、データ活用を推進するには、データサイエンティストのような分析の専門家から、戦略・企画などを担うビジネスサイド、現場担当者までのそれぞれが、データドリブンの考え方を身に着けていることが理想です。「データを扱うのは分析に携わる人だけ」という他人事の意識から、「自分がデータドリブンで業務課題を解決する」という当事者意識に切り替えていくことが大切です。
もちろん最終的にアクションを起こすのはビジネスサイドです。そのためにも分析をデータサイエンティストに任せ切りにせず、データサイエンティストとドメイン知識の共有やデータ活用シーンの検討に積極的に取り組みましょう。
データサイエンティストは、現場担当者と協力してデータ分析を進めましょう。経験や知識をデータに落としていくプロセスを一緒に経験することで、現場担当者にもデータに基づいた意思決定、すなわちデータドリブンの考え方を醸成できるでしょう。その過程でドメイン知識を習得し、ビジネスサイドと現場担当者に分析価値を積極的に、そして丁寧に説明し続けましょう。
一方、現場の担当者は、データ分析が改善施策の一環であることを意識しましょう。データ分析によって変わるのは現場の業務プロセスです。AIやデータ分析は専門領域外だからと避けるのではなく、ビジネスサイドやデータサイエンティストと協力し、業務プロセスをどのように変えられるかを一緒に考えます。自身の経験や知識を数値化し意思決定につなげるデータドリブンを実践できることが理想です。
データ分析の価値は意思決定の支援にあります。意思決定につながらない分析に価値はありません。ビジネスサイドもデータサイエンティストも現場も、データに基づいて意思決定を下す習慣を身に付けることが、データドリブンで課題を解決する文化の醸成につながります。データドリブン文化が醸成されば、データが互いの共通言語になるはずです。
浦谷 達也(うらたに・たつや)
日立製作所 社会システム事業部 社会通信ソリューション本部 社会デジタルソリューション推進部。大学院では、数値計算・エージェントベースドシミュレーションを用いた生物行動の進化を研究。大学院修了後、日立製作所に入社し官公庁システムの開発に従事。現在は、鉄道や電力、通信などの社会インフラシステム領域を対象に、統計的分析・機械学習を用いたデータ利活用を推進している。
阿部田 将史(あべた・まさふみ)
日立製作所 社会システム事業部 社会通信ソリューション本部 社会デジタルソリューション推進部。大学院で素粒子物理学を専攻後、日立製作所に入社。Cyber Threat Intelligence活用のフィージビリティ・スタディやAIを活用したサービス開発プロジェクトを経験。現在は鉄道、電力および通信といった社会インフラシステムのデータ利活用推進業務に従事している。