• Column
  • データ活用で失敗しないための3つの条件〔ビジネス部門編〕

分析を始める前に目標から課題を抽出しデータをマッピングする【条件2】

浦谷 達也、阿部田 将史(日立製作所 社会システム事業部)
2019年9月2日

マッピングに向けデータの詳細を把握する

 分析課題がリスト化できたら、それを解決するために必要なデータをマッピングします。マッピングでは、各種データベースに含まれるデータの詳細を把握している必要があります。ビジネスサイドが、データの詳細を十分に把握していれば問題ありませんが、そうしたケースはむしろ少ないでしょう。

 そのためマッピングのフェーズでは、各種システムのデータ構造に詳しいシステム部門の人材を投入し、どこに、どんなデータが含まれるのかを把握します。マッピングは後の分析フェーズに影響するだけに非常に重要です。

 分析に詳しいデータサイエンティストであっても、さまざまなデータベースの、それぞれのカラムが何を意味するのかがわからなければ、効果的な分析は難しくなってしまいます。データ構造は事前に、可能な限り把握しておきます。

 データ構造を把握した後でも、分析をしている最中に、データに関して新たな疑問が生じることがあります。データの内容に詳しいシステム部門の人材とスムーズに意思疎通が図れる状態にしておくことも、分析を円滑に進めるうえでは、とても大切です。

課題解決に必要なデータをマッピングする

 ビジネス課題のリスト化とデータの把握ができたら、それぞれのビジネス課題の解決に必要なデータをマッピングします(表2)。

表2:ビジネス課題にデータをマッピングした例

 それぞれの課題に対し、どのデータが必要になりそうかをマッピングしてください。分析してみたら「このデータは不要だった」「このデータが別に必要だった」ということは起こると思いますが、データを把握できていれば、ある程度適切なマッピングが可能なはずです。

 このときに重要なことは、現時点ではどの部門も所持していないデータや、こういうデータがあればこのビジネス課題を解決できるというデータも含めて、マッピングしてください。そうすることで、目的に対してどんなデータが足りないのかが判明します。

 このマッピングと、足りないデータの可視化が後々、分析フェーズやデータを収集するフェーズで、とても助けになります。解決したいビジネス課題に対し何が足りないかを明確にしておけば、やみくもにデータを収集してしまうという失敗を避けられます。

データの活用シーンも事前に検討する

 データ構造の理解と並行して、データ活用シーンも明確にします。「データ分析の結果をレポートにまとめました。活用方法は現場で考えてください」では、現場担当者はデータをどう活用すればよいかがわからないからです。

 現場の活用シーンを明確にしておけば、「データ分析の結果、これこれの結果が出ましたので、こういう判断をしてください。こういう行動を取ってください。」と提案でき、データ分析結果を行動につなげられます。

 たとえば「故障の予兆が出ているときのセンサーの値がわかりましたのでレポートにまとめました」では不十分です。これは「オペレーターの監視項目にセンサーから取得した設備稼働状況(センサーの値)を追加し、 センサーの値がイエローゾーンにあればメンテナンス頻度を2倍にする、レッドゾーンにあれば緊急メンテナンスを実施する」とすることで、データを現場の意思決定に活用できるようになります。

 活用シーンを検討できたら、費用対効果を見積もります。データ分析でKPIが達成できても、分析のためのシステム構築費・運用費のほうが大きくなってしまっては元も子もありません。分析システムは日々変わるデータの傾向に対応すべく、モデルの更新が必要です。分析システムの予測や判断が異常な結果を示していないかを定期的に人手で確認する必要もあります。

 このように分析用のシステムは、通常のITシステムと異なる運用が必要になるため、場合によっては運用コストが高くなる場合があります。分析システムの構成や運用方法をある程度イメージし、おおよその費用を見積もっておきます。