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  • データ活用で失敗しないための3つの条件〔ビジネス部門編〕

データ活用のプロジェクトサイクルを確立する【条件3】

浦谷 達也、阿部田 将史(日立製作所 社会システム事業部)
2019年10月7日

 図5は、あるWebサービスの売上高のグラフです。2017年6月から施策を実行し、7月の時点で評価をしたとします。この場合、施策を打った後に売り上げが下がっているので「施策に効果がなかった」として施策を止めてしまうと、施策を続けていれば得られるはずだった売り上げを逃してしまいます。

図5:Webサービスの売上高における施策検証の重要性

 今回は詳細を割愛しますが、施策の効果については、分散分析やt検定など各種統計的検定を利用して確かめます。また、効果分析にも、ある程度のデータ数が必要です。施策に効果がないと思っても、ある程度は続けるようにして、データを集めてから分析するようにしましょう。

より大きな目標の達成がデータドリブンな文化の定着に

 本連載で紹介した失敗しないデータ活用のプロジェクトサイクルを図示すると図6のようになります。KPI(重要業績判断指標)を設定し、分析課題を抽出、データを把握して、データの分析・収集を行います。分析が終わったら、アクションに落とし、施策を実行して、効果を分析します。大事なのは、これで終わらせないことです。

図6:失敗しないデータ活用のプロジェクトサイクル

 データ収集や分析・効果検証のなかからは、新たな課題や分析アイデアが生まれるはずです。別のKPIを立てたり、うまくいかなければKPIを変更したりしても構いません。データ分析は「やってみて初めてわかる」ことも多いため、柔軟にKPIを変更しながら反復していくことが重要なのです。

 本連載では、これからデータ活用を始めたい企業を対象に「失敗しない3つの条件」として、データドリブン文化の醸成、ビジネス目標・KPIの設定、分析課題とデータのマッピング、可視化や効果分析の大切さをお伝えしました。しかし、これらはデータ活用にとって“初めの一歩”にすぎません。

 一回きりの分析で終わってしまっては、データドリブンな文化を醸成できたとは言えません。適切な効果分析を行えば、新たな課題や分析アイデアが生まれてきます。再度、ビジネス目標・KPIに戻り分析課題を定義し直して、より高度なデータ分析に取り組みます。より大きな目標を達成するデータドリブンな文化の定着につながっていきます。

浦谷 達也(うらたに・たつや)

日立製作所 社会システム事業部 社会通信ソリューション本部 社会デジタルソリューション推進部。大学院では、数値計算・エージェントベースドシミュレーションを用いた生物行動の進化を研究。大学院修了後、日立製作所に入社し官公庁システムの開発に従事。現在は、鉄道や電力、通信などの社会インフラシステム領域を対象に、統計的分析・機械学習を用いたデータ利活用を推進している。

阿部田 将史(あべた・まさふみ)

日立製作所 社会システム事業部 社会通信ソリューション本部 社会デジタルソリューション推進部。大学院で素粒子物理学を専攻後、日立製作所に入社。Cyber Threat Intelligence活用のフィージビリティ・スタディやAIを活用したサービス開発プロジェクトを経験。現在は鉄道、電力および通信といった社会インフラシステムのデータ利活用推進業務に従事している。