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  • ドローンの業務活用を考えるための基礎知識

労働人口減少でドローン活躍の場が広がる【第1回】

吉井 太郎(センシンロボティクス 執行役員 エバンジェリスト 兼 サービス企画部長)
2020年1月24日

少子高齢化に伴う労働人口の減少や、これまでにない規模での災害の頻発など、現代社会には喫緊の課題が山積しています。そうした中で、業務をより効率的に、より安全に遂行するためのツールとして期待が高まるのがドローンです。今回は、ドローンの業務活用における可能性を紹介します。

 「ドローン(無人航空機)」は、2015年12月に改正された航空法により次のように定義されています。

「飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(200g未満の重量(機体本体の重量とバッテリーの重量の合計)のものを除く)」

 この航空法改正を受けて、さまざまなドローン製品が発表され活用例も増えるなど産業としての動きが加速されました。同時に、ドローンを使った事件が起こるなどで注目が一気に高まりました。そのため2015年は「ドローン元年」とも呼ばれています。

 そのドローン産業が今、本格的な成長期に入っています。なかでも、機体の製造・販売ではなく、それを使ったサービス分野への期待が高まっています。『ドローンビジネス調査報告書2019年版』(インプレス)によれば、業務用ドローンビジネスの市場は2024年に5,000億円を超え、その70%をサービス分野が占めると予想されています。

 予想はあくまで予想ですが、ドローン業界に実際に身を置く者として、大きな変化を肌で感じています。ドローンを使って、これまでは見られなかった視点による映像を見るだけで満足していた企業が、2017年頃からは業務に適用した場合の具体的な成果を求め始めたのです。

 つまり多くの企業が、ドローンを単なる新技術や面白そうなガジェットとしてではなく、業務効率化・課題解決のツールとしてとらえ始めているのです。

小型航空機やラジコンヘリを代替していくドローン

 どんな分野でドローンの活躍が期待されているのでしょうか。

 空を飛び、さまざまなカメラやセンサーを搭載できるドローンは、いわば「人間の目」の代わりとして、これまで目が届かなかったところにリーチできるツールとして期待されています。そのため、特に活用が進むであろう分野としては、図1にある9領域が挙げられます。

図1:ドローンの活用が進むであろう9領域

 これら9領域の中でも、空撮や空中農薬散布など、ドローン以前に小型航空機やラジコンヘリコプターによって業務が実施されていた分野は、いち早くドローンの活用が始まりました。特にドローンによる空撮は、今やテレビ番組などで見ない日はないほどで、タレントとスタッフ数人で海外ロケを行うような番組でも空撮映像が撮れるのは、ドローンのおかげと言えるでしょう。

 ドローンの活用により革新的な変化がもたらされたのは航空写真測量(空中写真測量)業務です。航空写真測量とは、空中から垂直に撮影された航空写真を重ね合わせて得られる画像データを解析する測量技術です。従来は衛星や小型航空機を使わざるを得なかったものが、ドローンの登場により安価に実現できるようになりました。

 国土交通省は建設現場へのICT活用を目指す取り組み「i-Construction」を推進しています。これを向け国土地理院は2016年「UAV(Unmanned Aerial Vehicle:無人航空機)を用いた公共測量マニュアル(案)」を作成しています。国を挙げてのドローン測量の普及が進められています。