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- IoTのラストワンマイルを担うLPWAの基礎知識
LPWA との親和性が高いFA(ファクトリーオートメーション)【第2回】
これをLPWAの一規格「LoRaWAN」で実現するならば、既存の負圧センサーの信号をLoRaデバイス経由でゲートウェイに送信し、そのデータをネットワークサーバーとアプリケーションサーバーで集約すれば、タブレットやPC上でデータを可視化できる(図1)。
ゲートウェイには、粉塵や油などが飛び散る環境でも使えるIP67防水防塵仕様の製品もあれば、安価で小型の卓上型製品もある。ネットワークサーバーはLoRaWAN規格に精通している技術者が管理する必要がある。だが、たとえば台湾Kiwi technology製のゲートウェイ製品はネットワークサーバーを内蔵しており、アプリケーションサーバーのみを管理すれば良い。
ネットワークサーバーとアプリケーションサーバーの機能を持つクラウド環境も提供されているため、同種のサービスを利用すれば、LoRaWAN対応センサーとゲートウェイを購入し接続すれば、すぐに運用することもできる。
例2:振動センサー
工場では、手の届きにくい高所や、可動部などの危険な場所に数多くの大型モーターが設置されている。高さ100メートルを越える煙突の内部にある、空気を上昇させるための大型のファンモーターが、その一例だ。
港湾のクレーンや鉄工所の室内クレーンなら、ワイヤー巻き上げ用のクレーンモーターが大量に使用されている。過度な負荷がかかるため、それらモーターの内部部品は消耗品だ。だが、その状態を検査するために毎回、クレーンの先端や高熱の煙突の高所に登ることは、もちろん容易ではない。
これらのモーターの故障は、振動から予知できる。ブレードが曲がり、折れ、欠けると軸の回転からスムーズさが消え、小さな規則的な振動が発生するためだ。その振動が他のパーツの故障を誘発し、やがて動かなくなったり焼けたりといった最終症状を迎える。そうなる前に最初の小さな異常振動から保全警報を出したい。
振動センサーには4〜20ミリアンペアなどのアナログ信号が出ているものが多い。その信号を地表の担当者の手元にあるPCなどで見られれば検査のために煙突やクレーンを登る必要はない。故障しそうな順にメンテナンス時にのみ登ればいい。
各種センサーの信号を取り出す方法は多数ある
他にも挙げるときりがない。水の使用量を計測するために、工場の周りにある池や井戸に設置したポンプに備わっている流量センサーの数値を定期的に見て回っていたというケースもある。
広大な工場の建屋外にある流量センサーを足で歩いて見て回るとなると、梅雨時や蚊の多い季節、台風の日、雪の降る季節など、その苦労には恐れ入る。流量センサーの値も、アナログ信号やRS485など、その取り出し方はいくらでもある。取り出した信号を無線で飛ばせばタブレット1つで集中管理できるようになる。
次回は、工場以外で、LPWAと親和性の高い業界の活用例を紹介する。LPWAの導入をより身近に感じてほしい。
中村 周(なかむら・あまね)
菱洋エレクトロ ビジネスデベロップメント部 部長。中央大学電気電子工学科卒業後、キーエンス FAIN事業部でFA(Factory Automation)業界の営業を8年経験。NSMにてFAE(Field Application Engineer)、富士エレ/マクニカにて無線半導体などの分野でマーケティングマネージャーを務め、2018年2月より現職。
IoT/無線業界のキーマンと深いネットワークで規格の壁を超えた通信系コミュニティの立ち上げに注力し、「5GとLPWAべんきょうかいplus」も取り仕切る。同イベントには日本のIoT業界から200人を超える技術者が参加する。