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Fintechの東京一極集中は変われるか【第4回】

貴志 優紀(Fintech協会理事/Plug and Play Japan Director)
2020年11月16日

前回までは世界におけるFintechの最新事情を紹介してきました。チャレンジャーバンクの台頭が既存の金融機関の強力なライバルになったり、米Robinhood(ロビンフッド)が株式相場に影響を与えたりと、世界ではFintechの存在感が年々、高まっています。一方で日本はどうでしょうか。今回からは日本におけるFintechの最新動向をみていきます。

 日本におけるFintechは、2015年頃から盛り上がりを見せています。筆者が理事を務めるFintech協会が設立されたのも2015年9月。関係団体や省庁と連携し、Fintechを発展させるのが目的です。会員数は2015年以降増え続け、2020年10月時点では400社超に達しています。

 日本でFintechが順調に伸びてきた背景には政府の後押しがあります。資金決済法の改正や仮想通貨の登録制の開始など、Fintechに関する法律や制度の整備が進みました。

 たとえば2019年には、政府が「キャッシュレスの決済比率を40%まで引き上げる」と目標を掲げたことで新規参入が相次ぎ「キャッシュレス元年」と呼ばれました。2020年には「80の銀行でオープンAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を導入する」という目標を金融庁が打ち出しています。

多くの企業が乱立する日本のFintech

 Fintech協会の会員は、Fintechを手がけるベンチャー会員と、その他の法人会員に分かれています。400社超のうち140社がベンチャー会員です。ベンチャー会員には、どのような特徴があるのでしょうか。

 ベンチャー会員の事業内容を見てみると、ペイメント関連の決済または送金のサービスを提供する企業の割合が31%と高くなっています(図1)。海外のペイメント領域は一部の企業が寡占しています。多くの企業が乱立している点が、日本のFintech業界の特徴の1つだと言えるでしょう。

図1:Fintech協会におけるベンチャー会員企業が取り組む事業領域(2020年2月時点)

 ただ日本においても今後は、UI(ユーザーインタフェース)やUX(ユーザー)エクスペリエンス:顧客体験)などによって消費者による選別が進む可能性が高いと見ています。

 次に、ベンチャー会員企業の設立年を見てみると、2015年が14社で最も多く、2016年の13社、2017年の11社が続きます(図2)。創業5年以内のスタートアップが多く、ここ数年でフィンテックが一気に盛り上がってきた様子が見て取れます。

図2:Fintech協会におけるベンチャー会員の設立年の分布(2020年2月時点)