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SDGs時代が求めるFintech【第8回】

貴志 優紀(Fintech協会理事/Plug and Play Japan Director)
2021年3月16日

環境問題への意識の高まりなどを背景に、国連が掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の観点からの取り組みが、多くの企業にも求められるようになりました。そうした取り組みにおける解決策の1つとしてFintechへの期待が高まっています。SDGsとFintechの間に、どのような関係性があるのでしょうか。

 環境問題への取り組みなどを筆頭に、SDGs(Sustainable Development Goals:持続可能な開発目標)への関心が高まっています。SDGsは、2030年までに「持続可能で、よりよい世界」を目指すグローバルな活動計画で、17のゴール、169のターゲット(取り組み対象)を定めています。その対象は、環境のほか、貧困や飢餓、教育など多岐にわたり、先進国にあっても取り組むべき課題は少なくありません。

 金融業界におけるSDGsの取り組みでは「ESG投資」が最も目に付く動きでしょう。ESGは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を取ったものです。ESG投資では、企業をこれらESG分野での取り組みを考慮し、長期的な視点で分析・評価することで投融資を決定します。再生可能エネルギー事業や、医療・保険、児童福祉、教育などの支援事業など、SDGsのゴールに近づく取り組みへの融資などです。

資金調達手段として進化するクラウドファンディング

 SDGs/ESG投資などへの関心・実行が広がる中で、もう1つの手段として期待されるのが、個人などから幅広く資金を集めるためのFintechであるクラウドファンディング(CF:Crowd Founding)です。SDGs/ESG投資に特化した手段ではありませんが、社会課題解決型のスタートアップ企業などにとっては有効な手段の1つでしょう。

 CFでは、例えば米国ではリーマンショック後の2008年にIndiegogoが、2009年にはKickstarterが、それぞれ設立されています。Kickstarterでファンディングに成功したプロジェクトの数は、2021年2月21日時点で19万件、集めた資金の合計は約56億ドルに達しています。資金は幅広い分野に提供され、各種事業の育成に貢献しています。

 日本では2011年の東日本大震災後にCFが一気に盛り上がりました。大手のCAMPFIREやREADYFORが同年からサービス提供を開始し、2013年にはサイバーエージェント傘下のMakuakeが続いています。

 米国でのリーマンショック後、日本では東日本大震災後にCFのサービスが次々と生まれたことは偶然ではないでしょう。何かしらの危機が起こり資金調達が難しくなった際に、それをカバーする手段としてCFは各地で浸透してきました。コロナ禍が続き、震災から10年という節目でもある2021年は、日本のCFが、より進化する年になるとみられます。

 CFには大きく3つの類型があります。(1)資金を寄付する「寄付型」、(2)対価として商品/サービスを提供する「購入型」、(3)「投資型(融資型や株式型)」です。日本では、寄付型と購入型が先行して利用されてきました。

海外ではスタートアップの調達手段に

 これに対し海外では融資型、なかでも株式を使った資金調達が広がっています。特に先行するのが英国です。中小企業や個人事業主、スタートアップ企業などに向けた専門サイト『smallbusiness.co.uk』の記事によれば、2015年時点でスタートアップが調達する資金のうち15.6%がCFによるものです。第2回で紹介したチャレンジャーバンクの英MONZOもCFで資金を調達しています。