• Column
  • これが本当のFintech最前線

2021年にFintechが加速する3つの理由【第6回】

貴志 優紀(Fintech協会理事/Plug and Play Japan Director)
2021年1月19日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による外出自粛が呼び掛けられ、2021年は例年に比べて静かな年明けになりました。依然としてCOVID-19は猛威を振るっており景気の先行きには不安も残ります。しかし、Fintechにとって2021年は飛躍に向けた大きな節目の年になるでしょう。

 2020年、COVID-19によって非接触型金融の存在感が一気に強まりました(関連記事)2021年は、前年以上にFintechが盛り上がり、そのサービスの活用場面が一層広がると見ています。その理由は3つあります。それぞれを紹介します。

理由1:複数サービスを同時提供できる金融サービス仲介業の導入

 第1の理由は、「金融サービス仲介業」の導入です。20年6月に金融商品販売法が「金融サービスの提供に関する法律」に改正され、金融サービス仲介業が新設される見通しとなりました。この金融サービスの提供に関する法律は21年12月までに施行される予定です。

 これまで銀行業や証券業、貸金業など金融サービスを手がけるためには、それぞれで免許を取得する必要がありました。一方、21年に始まる金融サービス仲介業に登録すれば、文字通り、複数の金融サービスを同時に提供できるようになります。

 以前から既存の金融機関は、それぞれがオンライン化に取り組んでおり、スマートフォン用アプリケーションを使ったサービスも増えています。ただ利用者は、銀行、証券など金融サービスごとにアプリを使い分ける必要があります。金融サービス仲介業が新設された背景には、こうしたオンライン化が進んだ金融サービスを一気通貫で利用したいという消費者ニーズが高まったことがあります。

 この規制緩和によって、銀行が証券業に乗り出すなど既存の金融機関が別のサービスを提供するようになるだけでなく、他業界から参入するケースが増えると見られます。大手EC(電子商取引)企業など、既に顧客チャネルを持っているようなところほどメリットが大きいからです。既存顧客に対し複数の金融関連サービスを紹介すれば、ワンストップで取り込め顧客との関係をより強められます。

 中でも、そのための手段の1つとして注目を集めているのが「スーパーアプリ」でしょう。海外では中国のアリババ集団やテンセント(騰訊控股)、シンガポールのGrab、インドネシアのGoJekといった大企業が、決済や保険、チャット、宅配など、あらゆる領域のサービスを搭載したスーパーアプリを提供しています。規制緩和により、海外にあるようなスーパーアプリが日本でも生まれるのではないかと期待されています。

 新しく金融サービスに参入する企業は、必ずしも金融サービス仲介業に登録する必要はありません。免許を持たないチャレンジャーバンクやネオバンクが他の銀行と組むことで事業を展開しているように、金融機能を提供するBaaS(Banking as a Service)を利用する企業も増えることで、BaaS関連のFintechが盛り上がるでしょう。