• Column
  • ネットワークから見たDXの違和感

AIのネットワーク適用が“これから”と言う違和感【第6回】

人と人をつなぐコンタクトセンターでは実用が進む

能地 將博(日本アバイア ビジネスデベロップメントマネージャ)
2021年1月7日

コンタクトセンターの資産は優秀なエージェント

 コンタクトセンターの仕組みを超簡単に説明しました。このコンタクトセンターは、どのような課題、どのような目標を持って運営されているのでしょうか。それは大きく2つに分けられます。(1)顧客満足と(2)低コスト運営です(図1)。

図1:コンタクトセンター運営における課題とAIによる解決策

 (1)顧客満足については、以下などが重要な目標として掲げられています。

・お客様を待たせない(Average Waiting Time:AWT)
・お客様が好む方法でコンタクトできるようにする(電話、メール、チャットなど複数のコンタクト手段の提供)
・問い合わせに“ズバッ”と一発で解決する(First Contact Resolution:FCR)

 これらの目標は数値化しやいため、その他指標とともにKPI(重要業績評価指標)として管理されています。複数のコンタクトについては利用率推移で確認します。

 (2)低コスト運営が求められる背景には、多くのコンタクトセンターが間接部門的な扱いを受けることが挙げられます。なるべく低いコストでの運営が求められ、運営費の7~8割を人件費が占めるだけに、エージェントがより短時間でコンタクト応対できることが重要になってきます。

 先に挙げたFCRは、ここでも重要KPIになります。なぜならFCRが実現できれば、複数のエージェントを介さずに短時間で対応できるからです。その分、他の問い合わせ対応ができ、稼働率が向上します。

 優秀なエージェントはコンタクトセンターの貴重な資産でもあります。その方に辞められたら、また一から採用し、教育・育成しなければならず、またまたお金がかかってしまいます。エージェントに辞められない「働きやすい労働環境」も、低コスト運営につながってきます。

 エージェントの人数を増やせばAWTは短くなります。ですが、その分人件費は高くなります。より丁寧な対応、説明をすれば、それだけ対応時間が長くなり、稼働率は落ちます。“顧客満足”と”低コスト運営”という相反する課題を同時に実現させることがコンタクトセンターには求められているのです(図1)。

 そのため、先ほど挙げた「セルフサービス」の適用範囲を拡げることが、多くのコンタクトセンターで検討されています。エージェントを介さずに、顧客が自己解決してくれれば、人件費もかからず、無人で24時間対応できるメリットもあります。システム構築には相応のコストが掛かりますが、顧客満足と低コスト運営を実現できます。

エージェントの代替/支援でのAI活用が先行

 このような状況、背景があるなかでAIが登場しました。AIは、コンタクトセンターでどのような役割を果たせるのでしょうか。大きく3つの役割を担っています。(1)エージェントの代替、(2)エージェント支援、(3)分析・制御です(図2)。

図2: AIのコンタクトセンターにおける役割と具体的なソリューション