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AIのネットワーク適用が“これから”と言う違和感【第6回】

人と人をつなぐコンタクトセンターでは実用が進む

能地 將博(日本アバイア ビジネスデベロップメントマネージャ)
2021年1月7日

AIで最適な回答やルーティングを可能にする

(2)エージェントの支援

 FCRを実現するために、最適な質問回答をAIで支援します。「AIエージェントアシスト」といった機能が、それです。エージェント向けの自動FAQ(よくある質問と回答)といったほうがイメージしやすいかもしれません。

 AIエージェントアシストの基本技術はチャットボットと同じです。顧客が入力した、あるいは発した言葉をキーに、AIが最適解を見つけます。ただし、その最適解が顧客向けの回答ではなく、エージェント向けの回答例になります。顧客の質問に対し最適解となる回答を複数提示し、エージェントが迅速に回答できるようにサポートします。前述した「より短時間で回答する」という課題に対する解になります。

 なおAIセルフサービスとAIエージェントアシストがどのように使われているのかについては、筆者が勤める会社で作成したイメージビデオを参照ください。

(3)分析・制御

 基本的には冒頭での紹介した総務省やシスコの取り組みと同様ですが、コンタクトセンターの場合は、最適なエージェントにルーティングや顧客状況を分析することが該当します。

 分析・制御の具体例として、導入数はまだまだ少ないですが、AIルーティングと感情分析を紹介します。

AIルーティング

 大手通販事業者等に有効な方法として期待されている技術です。過去の成約成功事例から、顧客属性と最適なエージェントを“ペアリング”の観点から見つけだし、顧客から電話がかかってきたら、そのエージェントにルーティング(アサインして転送)します。

 特定の顧客属性と特定のエージェント(属性)のペアリングにより成約率が高まるという実証された仮説をもとに、膨大なデータから最適なペアリングを発見し、それを実際のルーティングに役立てます。膨大な顧客とエージェントのペアリング事例が必要なため、大手通販や大手コンタクトセンターでしか使えない方法です。

 日本ではまだ導入されてないと思われますが、米国では一部の超大手企業が導入し成果を上げているようです。

感情分析

 音声の物理的特徴量をAIで解析するとことで、リアルタイムに”喜び・平常・不安・悲しみ”の4つの感情と元気度を分析する技術です。分析結果をエージェントのステータスモニターに表示するほか、スーパーバイザーのモニタリングとしても使用します。

 例えば、スーパーバイザーが怒っている顧客に対峙しているエージェントを把握しサポートするといった用途が想定されています。スーパーバイザーが即時にエージェントをフォローすることで、顧客満足を高めるとともに、エージェントのケアが同時にできる利点が期待されています。

予想外の回答はAIが見いだした新ルールのため?

 コンタクトセンターでは、AIがすでに身近な技術として多く使われています。 コンタクトセンターに電話をかけると機械音が難しい質問をしてきたといったことに遭遇したら、その裏では間違いなくAIが使われています。

 そんなときは、本コラムの仕組みを思い出しながら、AIの質問に答えてみて下さい。予想通りの質問・回答が導きだせることでしょう。あるいは、まったく想定外の回答かもしれません。AIは人が思いもつかないルールを見つけ出してくれる技術です。

能地 將博(のうち・まさひろ)

日本アバイア パートナー営業本部 ビジネスデベロップメントマネージャ。早稲田大学卒業後、大手独立系SI企業に入社。その後、外資系IT企業のプロダクトマネージャ、マーケティングマネージャを歴任し、2008年より日本アバイアに勤務