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  • 〔誌上体験〕IBM Garage流イノベーションの始め方

Reason:AI技術を活用しより良い意思決定を導く【第12回】

木村 幸太、野村 哲也(日本IBM IBMコンサルティング事業本部)
2021年11月30日

ミニ演習3

状況 :あなたはサプライチェーンのDXを推進するGarageチームにデータサイエンティストとして参画している。現在はCo-Executeフェーズにあり、MVPを構築・育てる段階にある。あなたの担当する領域は需要予測だ。予測領域を3つに分割し、2〜4週間を1スプリントでモデルを構築し、ユーザーにぶつける計画で取り組みをスタートした。だが最初のスプリントでは、顧客が求めるであろう精度が十分に出せなかった。このような状況下において、あなたはいずれの行動をとるか。

選択肢
アクションa :精度向上に向けたモデルチューニングを重視し、ユーザーにぶつけるタイミングを延伸する
アクションb :今の状態でぶつけ、ユーザーの反応をうかがう

 Learn(第9回参照)のパートにもあった通り、Garageではユーザーからのフィードバックで学ぶことを重視する。従ってアクションaではなくアクションbが推奨される。ポイントはユーザーの反応から何を引き出すかである。

 ある製造業の例を挙げる。その企業では少量多品種品を対象に需要予測をIBM Garageで実施した。最初に2週間の計画フェーズを設け、検証領域を3つに分割し、2〜4週間を1スプリントとしてプロジェクトを回していった(図5)。

図5:スプリント全体の回し方

 各スプリントでは、ユースケースを起点に、より細かなタスクに落とし込み、動くモノ(MVP)を開発。この動くモノをもとにGo/No Goを判断することで価値を見極めていった(図6)。

図6:個別のスプリントの回し方

 結果6カ月で3つのPoC(Proof of Concept:概念実証)を実施した。うち2つが、価値=在庫削減効果+業務効率化につながる期待があることが証明でき、Co-Operateフェーズに移行できた。

 ここでのポイントは、3つのPoCのうち1つは早々にあきらめたことにある。モデルの精度が出ていなくても動くモノをユーザーにぶつけ、筋の良し悪しを見極めることで、残る2つの領域に注力することができたのだ。

 繰り返しになるが、IBM GarageではSpeed To Valueを重視する。この意味において、時間的な制約があることを前提に、少しでも価値創出のヒントを得る確率を高めるために最大限の努力を払うことが求められるのである。

木村 幸太(きむら・こうた)

日本IBM IBMコンサルティング事業本部 IBM Garage事業部 部長。IBMビジネスコンサルティングサービス(現日本IBM)に入社後、さまざまな業種の企業への営業やCRM、マーケティング戦略の策定・実行支援、BPR、システム化構想から導入など経験する。2018年1月にスタートアップを支援するIBM BlueHub、同年10月よりIBM GarageのLeadに着任。近年は、イノベーションやデジタル変革をテーマに、デジタル戦略やアジャイル案件を数多く手がけている。

野村 哲也(のむら・てつや)

日本IBM IBMコンサルティング事業本部 コグニティブ戦略 マネージング・コンサルタント。2001年に日本IBM入社。製造業担当SEを経て、コンサルタントとして企業の変革構想策定ならびに実行推進に従事。近年はデータサイエンスを活用したサプライチェーン改革の推進や、全社データ活用推進の支援などに従事している。