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安心・安全な街づくりに向けた“リアル空間”のセキュリティ【第26回】
セキュリティについては、誰もがその必要性と意義を認知しているはずである。これはスマートシティにおいても同様だ。スマートシティのセキュリティには、(1)実際の街で生活する住民の安心・安全を守る「リアル空間」のセキュリティと、(2)サービスが稼働するデジタルインフラやサービスそのものを守る「サイバー空間」のセキュリティとがある。今回はリアル空間のセキュリティについて解説する。
スマートシティで提供されるサービスは、街中に設置されたIoT(Internet of Things:モノのインターネット)センサーやカメラから収集したデータなどを都市OS(情報連携基盤)を介してデータ連携し、分析・活用・流通させることで成り立っている。これらサービス利用に欠かせない重要な取り組みの1つがセキュリティだ。安心・安全であることが、住民に選ばれる街、住民が住み続けたくなる街、さらに新たな産業を育んで持続的に発展し続ける街の最低条件になるからだ。
スマートシティのセキュリティには、(1)実際の街を守る「リアル空間」のセキュリティと、(2)デジタルインフラやサービス、個人情報などを守る「サイバー空間」のセキュリティとがある。
まずリアル空間のセキュリティは、住民が日々の暮らしのなかで犯罪や事件に巻き込まれないための対策を指す。住民が万一犯罪や事故に遭遇した場合、影響を最小化し必要な対策を速やかに講じることも含まれる。
IoTセンサーやカメラからのデータで住民の安全を担保する
街に暮らす住民の安心・安全を守ることは、何もスマートシティに限った話ではない。特に日本では、住民自身による防犯カメラの設置、地域コミュニティによる見回り、警察官によるパトロールなどの活動を通じて、犯罪や事件の発生を最小限に食い止めてきた。
スマートシティにおけるリアル空間のセキュリティは、そうした活動をさらに強化するものだ。IoTセンサーやカメラを設置し、そこから取得したデータで住民の安全を担保するという取り組みが主流になる。
そうした仕組みが機能していることを住民や訪問者に広く周知することで、犯罪や事件の発生を未然に抑止する効果が期待できる。犯罪や事件が発生したとしても、データを分析することで必要な措置や対応を素早く講じられる。住民の安心・安全な暮らしを実現することが、スマートシティの価値を高めることにもなる。国内外の代表的な事例を紹介する。
Fujisawa SST:多層的なバーチャル・ゲーテッドタウンを構築
神奈川県藤沢市で開発が進められている「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」では、リアル空間のセキュリティを担保する先進的な取り組みの1つに「バーチャル・ゲーテッドタウン」がある。
ゲーテッドタウンとは、街の出入口にゲートを設け、人や車の往来を厳格に制限・監視することで防犯性を高めるセキュリティのスタイルで、海外の高級住宅地などによく見られる。Fujisawa SSTでは、「街」「空間」「住戸」「人」の4重の多層的な対策をデジタル技術を使ってバーチャルに実現することで、街区内の商業施設などを訪れる周辺地域の住民に対し、開放的でありながら死角のないセキュリティを実現している。
具体的には、まず街区自体を、むやみに侵入できないように出入口をあえて少なく設計している。そのうえで、出入口や公共の建物、公園、交差点などに約50台の「見守りカメラ」と照明を効果的に配置し「見えないゲート」を構築した。照明は人感センサー付きLED街路灯になっており、夜間に人が近づくと数歩先までの照度を高める機能も持っている。
各住戸には、侵入検知や非常通報機能を備えたホームセキュリティシステムと、「セキュリティ・コンシェルジュ」と呼ぶ警備員による巡回サービスを導入している。各住戸の情報端末に表示される「タウンポータル」からは、街区内にある3つの公園の映像を閲覧でき、例えば公園で遊んでいる自分の子供の姿を確認できる。