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AI時代の“攻め”の社会インフラとして計算と電力をつなぐ自律型ネットワーク【第40回】

前回から、日本のスマートシティのこれからを捉え直している。これまでの「便利なアプリケーションの寄せ集め」ではなく、今後はAI(人工知能)/生成AI技術の普及を前提に、都市そのもののあり方をつくり直す取り組みが求められる。その中で今回と次回は、スマートシティを下支えする社会インフラを取り上げる。道路や上下水道といった社会インフラが抱える老朽化や人手不足といった課題の解決は当然ながら、AI時代の社会インフラとしてはネットワークやデータセンターなどの重要性が高まっていく。
都市は本来、人や企業、文化、行政機能が集積し価値を生み出す場である。しかし今、日本の多くの都市では、その基盤である社会インフラが静かに限界に近づいている。高度成長期に集中的に整備された道路や橋梁、上下水道などが一斉に老朽化しているからだ。道路や橋は2040年までに建設から50年を超える割合が75%程度に達する見込みだ。下水道管路が原因の道路の陥没も2022年時点で年間2600件に達している。
保守・運用に当たる人手も足りない。市町村では技術系職員がゼロの自治体が4分の1、5人以下の自治体が約半数に上る。国の試算でも、今後数十年の維持管理や更新費は巨額になる見込みだ。待ち受ける一斉更改の波と、担い手や予算のギャップが年々広がっている。
現場の実務レベルにも非効率な状況が慢性化している。事業者ごとに情報が分断され、紙の台帳や属人的運用により、本来なら横串で最適化できるはずの工事計画が、組織や制度の壁をまたげない。結果、同じ道路を何度も掘り返すといったことが繰り返される。
ただ状況は変わり始めている。維持管理を回すための“守り”の業務へのAI(人工知能)技術の活用が広がってきた。例えば、台帳をデジタル化し生成AI技術により老朽化リスクの高い区間を洗い出したり、ドローンと画像認識技術の組み合わせで橋や斜面の異常を早期に見つけたり、あるいは地中レーダーと3D(3次元)モデルで埋設物を可視化したり、電力・通信設備の異常検知や障害対応を自動化したりする取り組みである。
こうした取り組みを重ねることで、都市インフラの維持に向けた道筋は見えつつある。こうした社会インフラの“守り”の結実を前提に、生成AI時代に都市が成長するためには“攻め”の社会インフラが必要になる。“守り”のインフラを「滅びない都市」を維持するための最低防衛ラインだとすれば、“攻め”のインフラは「価値を生み続ける都市」を支えるための装置に位置付けられる。
計算と電力をつなぐ“神経”になる自律型ネットワーク
AI時代に最も大きな価値変容が訪れるのは、それを下支えするデジタル基盤である。都市はこれまで以上に「計算する力」と「電力」と「通信」に左右されるようになる。
例えば、生成AI技術による学習・推論、都市デジタルツインの更新、エージェントサービスの増加により、計算需要は一気に増える。データセンター向けGPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)の市場規模は、2029年に2023年比で15.6倍になる見込みだ。計算には電力が必要になり、拠点と利用者をつなぐには高品質のネットワークが必要だ。
言い換えれば、自律・分散・協調の3原則を満たしながら計算・電力・通信の3つをセットで整え、価値の源泉たるAI時代の産業やビジネスを呼び込む営みが“攻め”の社会インフラになる(図1)。
これら3層のうち、通信は計算と電力をつなぐ“神経”の役割を担う。AIシステムのための通信は、量が大きいだけでなく、求められる条件(遅延、帯域、安定性など)が用途によってバラバラだ。ピークに合わせて回線を積み増すだけではコストが合わない。
