- Column
- スマートシティのいろは
地域活性化におけるエンタメの役割と進化【第46回】
地域の独自性は生み出す3つのタイプと限界
地域エンタメを語るとき、地域の独自性が価値を生むコアになる。地域の独自性の源泉を俯瞰すると大きく3つのタイプに分けられる。
タイプ1:IP独占 × 運営投資型
東京ディズニーランドやユニバーサルスタジオジャパン(USJ)に代表されるモデル。独占的なIPと高いオペレーション品質の組み合わせで独自性を作る。大規模な資本力が前提であり、外から独自性を“与える”モデルといえる。参入障壁は非常に高い
タイプ2:自然・風土型
富士山のような地理的希少性や、魚沼コシヒカリや松阪牛のように気候・土壌に由来する食の風土ブランド、あるいは、その土地にゆかりのあるアーティストやIPが固有性の源泉になるモデルである。基本的には「もともとそこにある」ものを育んできた
タイプ3:創作者集積型
演劇や音楽のまちとして知られる東京・下北沢や、アニメやゲーム、アイドルなどのカルチャー発信地である東京・秋葉原のように、住宅環境や既存のコミュニティが引力となってクリエイターが集まり、場所の独自性が自然発生するモデルである。行政が後から追認や支援することはあっても、最初から計画して作れるものではなく、長い時間がかかる
これら3つを分析すると、タイプ1と2は「すでに持っているもの」を前提とした独自性であることが分かる。タイプ1は巨大な資本、タイプ2は地理と歴史を持っていない地域が後から手に入れることは難しい。タイプ3は長い時間と、意図的には再現しにくい集積の条件が前提になる。「新しい地域が意図的に独自性を生み出す」ことが、いかに難しいかが浮かび上がる。
デジタルは独自性を“届ける”ための道具
さて、近年のデジタル技術の普及は、地域エンタメの構造をどこまで変えたのか。率直に言えば「届ける範囲は広がったが、源泉そのものは変わっていない」というのが実態だ。聖地巡礼がバーチャルで世界に広がっても、元になるIPや地域文化なしには成立しない。バーチャルコンサートは地元アーティストなしには成立しない。デジタルは既存の独自性を広げる力を持つ一方、それ単体で地域固有の独自性を生むには限界がある。
このデジタルの力を最大限に活かしている段階が地域エンタメ2.0である。独自性のある価値を遠くに届け、バーチャル関係人口を形成する。2.0の次の問いとして、独自性の源泉そのものを、参加の積み重ねで生み出すことができるか。それが地域エンタメ3.0への発想の転換である。
結論として、独自性は“持つ”ものから“生み出し続ける”ものになり、そこでの主人公は運営者や設計者からコンテンツホルダーを経て、参加者やファン全員へと転換する。参加者全員が独自性の担い手となる仕組みが同3.0のコアになる。
次回は、地域エンタメ2.0の実績を踏まえた上で、同3.0の「共創経済圏」で地域の独自性を持つ価値と人の成長が循環する具体的な仕組みを紐解いていきたい。
上端 純平(かみばた・じゅんぺい)
アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部 ストラテジーグループ 通信・メディアプラクティス シニア・マネジャー。東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻修了。2009年アクセンチュア入社。通信・ハイテク業界を中心にビジョン策定・新規事業・R&D戦略・組織人材戦略に従事。直近数年はエンタメ・AI・Web3領域に注力。音楽家としても音楽・アートを通じた地域活動を実践している。
尹 昊(Yin Hao)
アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部 ストラテジーグループ 通信・メディアプラクティス シニア・マネジャー。一橋大学大学院商学研究科修了。2014年アクセンチュア入社。通信・エンタメ業界を中心に技術戦略・新規事業・海外展開に従事。直近数年はAgentic AIドリブンでの変革を軸に、IPホルダーのIP価値創造プロセスの再設計、コングロマリット企業のHQ組織・機能見直しなどを担当。
監修:藤井 篤之(ふじい・しげゆき)
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター。名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士後期課程単位満了退学後、2007年アクセンチュア入社。スマートシティ、農林水産業、ヘルスケアの領域を専門とし、官庁・自治体など公共セクターから民間企業の戦略策定実績多数。現在は戦略グループにおけるAI関連ビジネスのリードを務める。共著に『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(日経BP、2020年)がある。