- Column
- スマートシティのいろは
「地域エンタメ3.0」は価値を創出し続けられるモデルを目指す【第47回】

前回は、都市の画一化が地域の“役割と居場所”を失わせているのではないかという問いに対し、地域エンターテインメントの独自性を分析し、その進化を「地域エンタメ1.0」から「同3.0」の3つのタイプで示した。同2.0の段階では、独自性を届けるための道具としてデジタルが機能したものの、独自性の源泉そのものを変えるには「3.0」として、市民の参加を積み重ね価値や独自性を生み出し続ける発想が必要だと指摘した。今回は、地域エンタメ3.0の具体的な仕組みを紐解いていく。
前回、地域エンターテインメント(以下、エンタメ)が、どのように進化し得るかを以下の3段階で整理した。
地域エンタメ1.0 :「箱やイベントに人が集まる」段階。外から魅力を“与える”モデルで、主人公は「運営者」である
地域エンタメ2.0 :「人が地域に関わり続ける」段階。すでにある価値を“届ける”モデルで、主人公は「IP(Intellectual Property:知的財産)・コンテンツホルダー/ファン」である
地域エンタメ3.0 :「人がつくり・学び・対価を得る」段階。参加の積み重ねにより独自性を“生み出し続ける”モデル。主人公は「参加者全員」である
このうち地域エンタ2.0においては、関係人口をバーチャルに形成する「関係インフラ」が、ここ10年で急速に実績を積み上げてきた。例えば、埼玉県久喜市にある鷲宮(わしのみや)神社は、2007年に放送されたアニメ『らき☆すた』に登場し聖地巡礼スポットになった。放送前は13万人だった正月の参拝客が2016年には47万人に増加したという(久喜市商工会調べ)。市・商工会・ファンコミュニティの協働による継続的なイベントが経済効果を累積させた。
また静岡県沼津市は2016年から放送されたアニメ『ラブライブ!サンシャイン!! 』の舞台になり聖地になった。観光PR大使の起用や、まちあるきスタンプ、観光PR動画など、作品の世界と街をつなぐ公式施策を継続し、2019年には37年ぶりとなる転入超過を記録した。バーチャルから始まった関係が、繰り返しの来訪へと深化した事例である。
しかし地域エンタメ2.0には構造的な限界がある。独自性の“源泉”が存在し続けることを前提にしている点だ。聖地は元になるIP(Intellectual Property:知的財産)が失われれば消えていってしまう。創作者集積型の地域も、クリエイターが去れば個性が薄れていく。2.0は独自性を“届ける”ことには長けているが、参加者自身が継続的に新たな価値を生み出し、対価を得る構造までは持ちにくい。参加者は“楽しむ側”に留まり続け、創り・学び・対価を得るという共創の構造にはなりにくい。
独自性を“与えられるもの”から“生み出すもの”へ
そこで生まれる問は、独自の価値を“外から与えられるもの”ではなく“市民参加の積み重ねで生み出されるもの”にできないかである。
この問いに対する1つのヒントになるのが「高知よさこい祭り」だ。1954年に高知市が始めたこの祭りは、衣装・曲・振付・演出の全てを各チームが自由度高く設計でき、チームとして参加登録すれば踊ることができる。2024年の第71回には、約180チーム・約1万7000人が参加した。約70年かけて高知の固有文化として定着したと言える。
さらに注目すべきは、高知のよさこい祭りに感動した北海道大学の学生たちが1992年に札幌で創設した「YOSAKOIソーラン」が、今や275チーム・約2万7000人(2026年実績)を擁する国内屈指の祭りに育っていることだ。参加の門戸を広く保ちながら各チームが独自の演出を競う設計が、参加者が蓄積した物語で地域の文化圏を継続的に更新していく。これが地域エンタメ3.0の設計原則である。
では、参加が独自性を生み出し続ける仕組みは、どのように設計すれば良いのだろうか。成功事例を分析すると、そこには共通する4つのプロセスが見えてくる(図1)。
プロセス1 :テーマを設定し、コアの参加者を集めコミュニティを組成する
プロセス2 :多様なリソース(技術・時間・資金)を流入させる
プロセス3 :地域の「ひと・もの・とち」の価値創造に変換する
プロセス4 :報酬を還元することで次の参加への動機を生み、循環させる
重要なのは、それらを順番に実行することではなく、互いに連動させ、次の参加を呼び込む循環として設計することである。
