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地域活性化におけるエンタメの役割と進化【第46回】

上端 純平、尹 昊(監修:藤井 篤之、アクセンチュア)
2026年8月13日

生成AI(人工知能)技術の登場で「人間の役割やあり方は、どうあるべきか」という問いが社会の共通テーマになっている。そのヒントの1つに、人間のリアルな身体性や、物理的な都市・地域としての“場”の価値があるのではないか。人間が能動的に関与し、創造し、つながること。その過程で自分の役割や居場所を感じられること自体が心身の豊かさにつながるという視点だ。そのような観点から今回は、地域エンターテインメントの可能性を考えてみたい。

 近年は観光地を訪れても、大手チェーンの店舗が増え、施設のデザインや観光コンテンツに既視感を感じる場面が少なくない。効率を追求したサプライチェーンと標準化されたビジネスモデルは、多くの地域に経済的な恩恵をもたらす一方で“ここにしかない体験”を薄めていく側面を持っている。

 均質化が進む都市では、人々が地域に関わる“役割”と“居場所”も希薄になりやすい。かつて祭りの準備や商店街のにぎわいが担っていた「自分は、この場所の一部だ」という社会参加の実感が失われかねない。便利さの広がりと引き換えに、帰属感や能動的な関与の機会が縮小することは、現代都市の静かな課題である。

 エンターテインメント(以下、エンタメ)は、この問いに答えられる数少ない文化的インフラかもしれない。ただし、一方的に消費させる“集客装置”としてではなく、人が創り・学び・適切な対価を得る“共創経済圏”、すなわち参加することで地域の独自性を持つ価値が継続的に増す仕組みとして再定義される必要がある。

地域エンタメの進化の3段階

 地域エンタメが、どのように進化し得るかを3段階で整理したのが図1だ。単なる技術やビジネスモデルの段階論ではなく、地域のなかで人が、どのように関わり、自分の役割を見出し、創造性を発揮していくかという“関与の進化”でもある。特に注目してほしいのは「独自性の源泉」と「主人公」の列だ。

図1:地域エンターテインメントの進化モデル

地域エンタメ1.0 :「箱やイベントに人が集まる」段階。外から魅力を“与える”モデルで、主人公は「運営者」である
地域エンタメ2.0 :「人が地域に関わり続ける」段階。すでにある価値を“届ける”モデルで、主人公は「IP(Intellectual Property:知的財産)・コンテンツホルダー/ファン」である
地域エンタメ3.0 :「人がつくり・学び・対価を得る」段階。参加の積み重ねにより独自性を“生み出し続ける”モデル。主人公は「参加者全員」である

 エンタメは古くから、地域の求心力を担ってきた。遊園地や劇場、美術館、スタジアム、商業施設、祭りなどである。いずれも人を集め、消費と回遊を生み、地域のイメージを形づくる“集客装置”として機能した。

 しかし地域エンタメ1.0の段階は以下のような構造的な課題を抱えやすい。

課題1 :大型IPを有する都市圏の施設と地方の文化施設の間には資本力の差があり、地方都市が差別化するには構造的なハードルがある
課題2 :話題の施設のオープニングや期間限定の企画が一過性に終わるケースもあり、継続的な関係を育みにくい
課題3 :何らかのデジタル技術を導入しても、地域固有の文脈と切り離された体験は他地域でも模倣されやすく、記憶に残りにくい傾向がある

 これら課題への打ち手は、街に新しい箱を置くことだけではない。街そのものを、住民と来訪者、ファン、クリエーターのそれぞれが持つ物語や体験を重ねられる“創作のキャンバス”として開く発想が要る。これからの都市の差別化は、完成品としての景観だけでなく、更新され続ける創作余地にも宿る。

 人を「一度集める」という発想のままでは画一化は免れられない。求められるのは、人がその都市に関わり続ける理由の設計である。