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「地域エンタメ3.0」は価値を創出し続けられるモデルを目指す【第47回】
各地に分散している取り組みをナレッジ化し連結する
地域エンタメ3.0のモデルの強みは、大型投資を必要としない点にある。日本の地域の多くは、大型テーマパーク型の独占も大規模施設への投資も現実的ではない。これに対し独自性生成サイクルは、最初のコアファン・クリエイターを50人程度集められれば始められる。
一方で、初期参加者の質と熱量が、その後のコミュニティ形成を左右する。ただここに、日本固有の課題がある。
これまで地域のカルチャーづくりは、熱意ある少数の個人が、とにかくコツコツと足を運び、時間をかけて築いてきたのが実態だ。NPO(Non-Profit Organization:民間非営利組織)のような小さなコミュニティが立ち上がっても、中心人物が去ったり資金が尽きたりすれば活動は止まる。そして数年後、隣のエリアであるいは次世代の誰かが、また同じところから始め直す。結果「スケールしない」「ナレッジが移転されない」ということが繰り返される。
こうした日本の分散型カルチャー構築の構造的な弱点を、AI技術とデジタル基盤は「失われていた知」をつなぐことで克服できる可能性がある。「誰が何を試み、どう機能したか」という実践の結果をナレッジ化し、次の挑戦者が参照できるようにできるからだ。
そこでは、分散した取り組みが孤立したまま消えるのではなく、互いの経験がつながり合う“ナレッジの網目”が形成される。地域エンタメ3.0モデルが描く分散型の共創経済圏は、それぞれがバラバラに車輪を再発明するのではなく、情報と知恵がうまくつながり合う構造も意味している。
AI技術は、このシードを小さく、速く、多地域で試すことを可能にする。創作のハードルを下げ、遠隔の参加者をつなぎ、貢献の痕跡を残し、対価の還元を支え、そして地域をまたぐナレッジの橋渡しをする。これにより、これまで一部の熱量ある人に依存していた共創を、より多くの人に、より持続的に開いていく。今後10年間に、この設計を仕込むかどうかが、地域の独自性だけでなく、人がどれだけ能動的に関わり続けられるかを分けることになるだろう。
これからの都市の競争力は「どれだけ多くの人を一度に呼べるか」ではなく「どれだけ多くの人が関わり、創り、対価を得ながら関わり続けたい」と思える場になれるかどうかで決まる。
AI技術が人間の役割を問い直す時代において、リアルな都市・地域の場で人が能動的に創造し、つながるための仕組みを設計することが、地域エンタメ3.0の本質であり、エンタメは都市の新しい独自性ある価値を編む経済圏になる。それは技術の問題ではなく「都市の主人公は誰か」を問い直すことから始まる。
上端 純平(かみばた・じゅんぺい)
アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部 ストラテジーグループ 通信・メディアプラクティス シニア・マネジャー。東京大学大学院工学系研究科精密工学専攻修了。2009年アクセンチュア入社。通信・ハイテク業界を中心にビジョン策定・新規事業・R&D戦略・組織人材戦略に従事。直近数年はエンタメ・AI・Web3領域に注力。音楽家としても音楽・アートを通じた地域活動を実践している。
尹 昊(Yin Hao)
アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部 ストラテジーグループ 通信・メディアプラクティス シニア・マネジャー。一橋大学大学院商学研究科修了。2014年アクセンチュア入社。通信・エンタメ業界を中心に技術戦略・新規事業・海外展開に従事。直近数年はAgentic AIドリブンでの変革を軸に、IPホルダーのIP価値創造プロセスの再設計、コングロマリット企業のHQ組織・機能見直しなどを担当。
監修:藤井 篤之(ふじい・しげゆき)
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター。名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士後期課程単位満了退学後、2007年アクセンチュア入社。スマートシティ、農林水産業、ヘルスケアの領域を専門とし、官庁・自治体など公共セクターから民間企業の戦略策定実績多数。現在は戦略グループにおけるAI関連ビジネスのリードを務める。共著に『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(日経BP、2020年)がある。