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新たな地域ガバナンスに向けDAOは行政を変えられるのか【第49回】
未来のシナリオをAIで可視化する
そこにAI(人工知能)技術を適用すれば、可能性がさらに広がるだろう。統計モデルと組み合わせることで、未来のシナリオに対し、明示した仮定と利用可能なデータの範囲内で、影響度合いを推計・比較できるかもしれないからだ。
具体的には「公共交通を維持した場合と廃止した場合で10年後の医療費や商店街の売り上げや人口、税収がどう変わるのか」「子育て支援に投資した場合、地域経済にどのような影響が出るのか」「空き家対策を進めた場合、移住者数や地域の不動産価値にどう影響するのか」といったシナリオを事前検証できる。
ただし、AI技術が正解を決めるわけではない。「どの未来を選ぶのか」「誰の負担をどこまで許容するのか」「何を公平と考えるのか」「どの価値を優先するのか」などは、人間社会が決めるべきことである。
行政は最終的な責任を負うが全ての知を独占できるわけではない。DAOは民主性を広げられるが現実の実行力を自動的には持たない。地域金融は実務と信用を持つが公共性そのものを担うわけではない。AI技術は知を広げられるが民主性を持たない。
これら4者は競合するものではない。むしろ、役割を分けて組み合わせることで意味を持つ(図2)。行政は公共性と説明責任を担い、DAOは地域の知恵と関心を集める。地域金融は人々が動くためのインセンティブを設計し配分する。そしてAI技術は未来を可視化する。
DAOが地域ガバナンスを変える入り口に
あらためて最初の問である「DAOは行政を変えられるのか」に戻りたい。行政をなくすという意味では変えられない。行政の責任をDAOに丸投げすることもできない。しかし、行政だけに閉じていた意思決定を、地域全体へ開いていくことでDAOは行政を変えうる。
これから問われるのは、どの技術を入れるかではない。誰が、どの情報をもとに、どう議論し、どう決めるのか。そして、その決定をどう人々の行動につなげるのかだ。
複雑化する社会に必要なのは、単なる新しい技術ではない。行政だけが考え、行政だけが決め、行政だけが実行するのではなく、地域の知恵や関心を集め、必要な資金やインセンティブを配分し、地域全体で動いていくための新しいガバナンスである。DAOはそのための万能薬ではないが、行政と地域金融とAIとつながることで、地域ガバナンスを変える入り口になる。
藤瀬 秀平(ふじせ・しゅうへい)
アクセンチュア ビジネスコンサルティング本部 ストラテジーグループ プリンシパル・ディレクター。東京三菱銀行(現三菱UFJ銀行)、スタートアップ、日系証券会社を経て、2021年アクセンチュア入社。グローバルマーケッツおよびデジタルアセット・トークナイゼーション領域が専門。直近では、ステーブルコイン、トークン化預金、トークン化MMF、セキュリティトークン、暗号資産ETFなど、金融市場のインフラ変革に係る経営アジェンダを数多く手掛ける。
監修:藤井 篤之(ふじい・しげゆき)
アクセンチュア ビジネス コンサルティング本部 ストラテジーグループ マネジング・ディレクター。名古屋大学大学院多元数理科学研究科博士後期課程単位満了退学後、2007年アクセンチュア入社。スマートシティ、農林水産業、ヘルスケアの領域を専門とし、官庁・自治体など公共セクターから民間企業の戦略策定実績多数。現在は戦略グループにおけるAI関連ビジネスのリードを務める。共著に『デジタル×地方が牽引する 2030年日本の針路』(日経BP、2020年)がある。
