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脱メール/Excelで会議時間は半減し生産性は約50%増に

日本の”ものづくり”が求めるコミュニケーション環境の実現法

DIGITAL X 編集部
2021年2月3日

経営層から「ツール移行はトップマネジメントの課題」と呼びかけ

 並行して長澤氏は、経営陣に依頼し、このプロジェクトがトップマネジメントによる実現課題である旨を全社に呼びかけてもらい、意識の盛り上げに努めた。

 こうして社内のコミュニケーションの基盤がメールからAsanaに移行した結果、多くの改善が生まれた(図2)。例えば従来はExcelでバラバラに管理していた会議での決定事項をAsana上に集約し、次回、会議のアジェンダに利用する仕組みを構築することで、会議時間が最大で50%以上短縮できた。

図2:メール中心をAsana中心に置き換えたことによる成果の例

 長澤氏は、「会議後に対応すべき事項も明確になり、各担当者が責任をもって推進していけるようになり、以前のような『後回しや忘れ』が皆無になりました。コロナ禍にあっても、労働生産性は前期比で47%向上し、大手企業と比べても遜色のない効率化を実現できたと自負しています」と話す。

情報を1カ所に集約したことが仕事をスムーズかつ高品質に

 その後もテック長沢では、Asanaを活用した改善に積極的に取り組んでいる。成果の1つに、各種会議のアジェンダ活用がある。上述した会議の決定事項のアジェンダ化をさらに進めたものだ。

 「社内の様々な会議のそれぞれをAsana上に『プロジェクト』として設定しておけば、会議で出てきた議題が自動的に整理され、次回の会議のアジェンダや議事録として利用できます。これらの記録は、例えば課長会議に上がった議題を役員会でも共有するなど、プロジェクトをまたいだ共有が可能です」と長澤氏は、その効果を話す。

 社内ワークフローの効率化も図っている。社内の教育訓練計画の策定を例にとれば、これまではExcelで計画書を作り、その書類を社内で持ち回って社長の“ハンコ”をもらっていた。それがAsanaでは、「画面上で『未承認』から『承認済み』に切り替えるだけでオンライン承認できるので、社長は外出先からでも決済できます。承認記録が認印と同等の証跡になるため、ISO(国際標準化機構)の認証維持審査にも問題なく通りました」(長澤氏)。

 ほかにも、プロジェクトマネジメントのガントチャートをExcelから移行したり、製造現場における5S・安全巡回記録ではスマートフォンのカメラアプリと連動させて管理したりしている(図3)。

図3:製造現場の5S・安全巡回ではスマートフォンのカメラアプリと連動させている

 長澤氏は「バラバラに管理されていた情報が1カ所に集約されたことで、仕事が非常にスムーズかつ高品質になりました。プロジェクトの主題である『緊急度にかかわらず、すべての重要な仕事が確実に進捗できる』ようにもなりました。コミュニケーションが活性化され、トップダウンの指示とボトムアップの改善提案を両輪とした改善が進むようになったのは大きな成果です」と胸を張る。

 そのうえで長澤氏は、「中小の製造業こそ、こうしたワークマネジメントプラットフォームによって、メールとExceによるコミュニケーションを脱却し、大手企業に負けない成長力を創り出していきましょう」と力強く呼びかけた。