- Column
- デジタルで変わる組織―離れていても強いチームを作る
脱メール/Excelで会議時間は半減し生産性は約50%増に
日本の”ものづくり”が求めるコミュニケーション環境の実現法
テック長沢は、新潟県柏崎市に本社を置く自動車部品や産業設備部品の製造・組み立てメーカー。事業拡大に向けたM&A(企業の統合・合併)なども実施してきた結果、社員数も170人規模にまで成長した。だが一方は、組織が大きくなるにつれ見逃せない課題も発生してきた。同社専務取締役の長澤 博 氏が「DIGITAL X Day 2020 Online」に登壇し、成長を支える組織とコミュニケーションのあり方について、自らの取り組みを含め紹介した。
「当社はこれまで、業務依頼や情報共有にはメールを使ってきました。その量が増えるにつれコミュニケーションに支障を来すようになり、社長をはじめトップマネジメントの会議で決めた施策などが順調に進まないケースが出てきました」−−。新潟県柏崎市で自動車部品や産業設備部品の製造・組み立てを事業にするテック長沢の専務取締役である長澤 博 氏は、企業の成長に伴うメールによるコミュニケーションの難しさを、こう語る。
メール量が増え重要なことも後回しに
原因は、いくつかある。「1つは、業務量が増えるなか、製品の納期や品質に直結しない課題は、それが重要であっても後回しにされがちなこと。またメールの数が膨大になると管理職が状況を的確に把握し対応することが難しくなる」(長澤氏)。さらに、同社では会議の決定事項をExcelのシートにまとめていたが、これも数が増えすぎて全部を見ることが不可能になっていた。
「管理職各人の課題の管理方法も、手帳やメーラーのフォルダで整理している人や、自身の記憶だけで対応している人などとバラバラで属人化されていました。結果、情報が的確に整理されず、コミュニケーションが複雑化していたのです」と長澤氏は当日を振り返る。
そこで同社は、コミュニケーションの改善に向けて複数の取り組みを開始した。その一つが「事務職の生産性向上プロジェクト」である。
同プロジェクトについて長澤氏は、「製造業の現場では日常的に行われているカイゼンを事務職や管理職を対象に取り組みを進めようという試みです。具体的にはデジタルツールを導入し、社員の意識はもちろん、コミュニケーションやマネジメントの仕組みそのものを改革するという狙いがありました」と説明する。
事務職の生産性向上プロジェクトでは、コミュニケーションツールの主体をメールから新しいツールにどう置き換えていくかが大きな課題になる。
デジタルツールの選定においては、中国にある現地法人と本社の間でのコミュニケーションツールとして導入していたワークマネジメントプラットフォームの「Asana」(米Asana製)に着目した。通常の業務メールをAsanaが持つメールアドレスに転送すれば、社員一人ひとりがなすべきことのすべてを「マイタスク」と呼ぶポータル画面で管理できるためだ。「これならスムーズに置き換えられる」と長澤氏は考えた。
実際の導入にあたっては、「メール同様に、全員が自主的に毎朝閲覧するほど、活発な利用状況を作り出す」というチーム目標を設定。そのためはツールの十分な理解が前提になるため、操作マニュアルをベンダーから提供されたものに加え、自社でも独自に作成した。特にメールとの棲み分けを意識した理解の促進に努めた。