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- デジタルツインで始める産業界のDX
デジタルツインを実現する5ステップ(前編)【第2回】
ステップ2:データを吟味する
デジタルツイン構築プロジェクトにおける重要な成果の1つは、データを活用して業務を改善できるようになることです。従業員の勘と経験に依存していた業務を、データに基づいた判断に置き換えます。
ただ、一口に「データ」と言っても、実際に活用できるかどうかは一概には言えません。組織内に存在するデータは、次のように様々な状態に置かれているはずです。
デジタル化されていないデータ :従業員が記憶している情報や、紙に記録された情報を含む
ネットワークから断絶されているデータ :従業員のPCに保存されている文書やスプレッドシート、情報システムとは切り離された機器に格納されている運転状況を示すデータなど
部門ごとに独立して管理されているデータ :アクセスが限定されていたり、独自のデータ構造のため担当者以外は解釈が困難だったりする
内容や目的が不明確な共有データ :部門をまたいでのアクセスはできるものの、どのように収集・加工されたかや、データの利用目的、データ構造が不明
取り扱いに注意が必要なデータ :組織の機密情報や顧客のプライバシーに関わる情報が含まれており、有用だが共有にセキュリティ上の対策が必要
品質に疑問があるデータ :情報の鮮度や一貫性、誤差やばらつきといった観点から、そのままでは利用できない、もしくは品質の確証が持てない
特に産業システムにおいて特徴的なのが、多様なデータソース(データが一次的に生成されるシステム)の存在です。個々の装置や機器に対してベンダーが提供している情報システムの標準化が進んでいないうえに、装置・機器の数が膨大なためにデータ連携が困難という、いわゆる「データサイロ」問題です(図3)。データは持っていても活用が進まない原因の1つです。
これに対し、データ活用事例などで取り上げられるインターネット上の消費者向けサービスは事情が異なります。例えばショッピングサイトでは、システムの設計時点で商品や顧客のデータベースが整備され、決済システムや配送システムと連携して運用されます。標準的な技術の確立・使用が進んでいることも、広告ネットワークやマーケティングツールとの接続や拡張を容易にしています。
ステップ2では、まず組織が持っているデータを把握すると同時に、上述したような個々のデータの状態と、活用を阻んでいる原因を明らかにする必要があります。
加えて、ステップ1で確定したユースケースの実現に必要なデータをマッピングします。これにより、ユースケースを実装するためには現状のデータでは欠けがあることが判明するかもしれません。
その場合は、新たにデータを収集する方策を考えるか、既存データの加工や変換で補うか、もしくは仮の合成データを使って収集は次フェーズに後回しにするかなどを検討します。
いかがでしたでしょうか。次回はステップ3〜5について説明します。
草薙 昭彦(くさなぎ・あきひこ)
Cognite チーフソリューションアーキテクト 兼 CTO JAPAN。1975 年神奈川県生まれ。東京大学大学院工学系研究科電子情報工学専攻修士課程修了。大手外資系IT企業数社を経て、現職。シンガポール在住。近年はデータエンジニアリング、分析および、その表現手法としてのビジュアライゼーション技術に重点を置いている。東京の公共交通3Dマップ「Mini Tokyo 3D」の作者としても知られる。