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  • 新たな顧客接点を創出するコンタクトセンターの姿

コンタクトセンターのオムニチャネル化と在宅対応が進展【第1回】

中野 正人(ジェネシスクラウドサービス ソリューションコンサルティング本部・本部長)
2021年6月14日

コンタクトセンターのクラウドシフトが急進

 コンタクトセンターのオムニチャネル対応と応対業務の在宅化を支えるのが、クラウド型のコンタクトセンターシステムの台頭である。特にCOVID-19の拡大に伴いクラウド型システムの利用が急増している。これは海外だけでなく日本においても同様だ(図3)。

図3:日本のコンタクトセンター事業者におけるクラウド型システムの活用状況(出所:『コールセンター白書』、リックテレコム)

 筆者が所属するジェネシスにおいても、クラウドの新規契約数は2020年上期(1~6月)に前年同期比で3桁成長となった。さらに、同年第2四半期(4~6月)の全体の新規契約件数は第1四半期の2倍以上に増えている。各社ともコンタクトセンターにおける“3密問題”への対応を迫られた結果だ。

 また中・大規模のコンタクトセンターにおいては、対話手段としてメールやチャットの利用が増加した。メールは51%、ウェブチャットは47%、ソーシャルメディアが37%、それぞれ利用が増えたとの報告もある。顧客が期待するチャネルの変化だけでなく、コロナ禍で電話以外の方法で企業に連絡を取ろうとしたこと、コンタクトセンター側でもリモート作業の広がりとビジネスの継続性を保とうとしたことが重なった結果だろう。

 図2に示したように、多数のコンタクトセンターが在宅でのオペレーションを検討している。ただし、その中には在宅オペレーションに問題なく移行できたコンタクトセンターと、できなかったコンタクトセンターがある。在宅シフトにおいては、情報セキュリティをはじめとして、在宅業務のためのITインフラを整備する必要があるからだ。

 コンタクトセンターを在宅対応にシフトするためのITインフラの整備方法としては、(1)既存システムを拡張する、(2)既存システムに在宅で必要な新システムだけを追加する、(3)新たに在宅用のプラットフォームを構築する、といった選択肢がある。

 いずれの選択肢を選んでも、在宅運用に円滑にシフトできた事例に共通するのはITインフラにクラウドを採用していることだ。自社で運用するオンプレミス型のシステムを採用して在宅シフトができたケースはごく一部である。

 今後、ニューノーマルな環境に適応した働き方へと変化していくなかで、コンタクトセンターには在宅勤務の継続、もしくは在宅と通勤を組み合わせたハイブリッドな運用が求められる。クラウドシフトができていないなら、その採用を改めて検討するべきだろう。

AI/ボットの採用によるオペレーター業務の改革も必要

 在宅対応に合わせて、コンタクトセンターのシステム環境として検討すべきは、クラウドシフトに加え、AI(人工知能)やボットといった技術の活用も重要である。対応業務の一部をAI技術によって代行しオペレーターに余裕が生まれれば、これまでとは違った、より柔軟な顧客対応力を発揮できる環境になるはずだ。

 コロナ禍でクラウド型コンタクトセンターシステムが普及したことで、オムニチャネル化した顧客窓口からの問い合わせに、オペレーターは在宅から対応できるようになった。先行企業は既に、AI技術やボットによってオペレーターの労力削減にも乗り出している。

 こうした取り組みは、オペレーターのモチベーション維持にも直結する。これまでストレスの高い電話対応に対し、リアルな職場では、ケアをするマネージャーがリアルに存在した。それが在宅では、1人で働く環境に置かれるため、できるだけストレスのない業務やサポート、何よりオペレーター同士が支え合うチームとしての労働環境を作り出す必要がある。

 コンタクトセンターの内側には普段、接する機会はほとんどなく、現場の変化は、なかなか一般には伝わってこない。だが進化は着実に起こっている。本連載ではコンタクトセンターの状況を整理していくことで、未来の指針を明確にしていく予定だ。次回は、在宅コンタクトセンターの構築事例を掘り下げて紹介する。

中野 正人(なかの・まさと)

ジェネシスクラウドサービス ソリューションコンサルティング本部・本部長。SAPジャパンや日本マイクロソフトを経て2011年にジェネシス入社。ビジネスコンサルタントとして顧客のコンタクトセンター成熟度調査や、その結果に基づくコンタクトセンター高度化プランを多数立案してきた。海外組織とのパイプを生かし、事例情報の収集や海外視察ツアーの企画などに取り組む中で得たコンタクトセンターの将来像に関する幅広い知見を顧客へのコンサルティングに生かしている。