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  • 新たな顧客接点を創出するコンタクトセンターの姿

コンタクトセンターのオムニチャネル化と在宅対応が進展【第1回】

中野 正人(ジェネシスクラウドサービス ソリューションコンサルティング本部・本部長)
2021年6月14日

コンタクトセンターは企業と顧客を結ぶ場だ。顧客や消費者からの質問や注文、クレームなどを受け付け、顧客が満足できる結果を返す。顧客や消費者のニーズや世の中の変化に合わせ、コンタクトセンターの運営や仕組みも刷新されなければならない。今回は、コロナ禍におけるコンタクトセンターの現状を概観する。

 コンタクトセンターと聞くと、ワンフロアにデスクとPCが並び、オペレーターが電話で対応する勤務体制をイメージする人も少なくないだろう。だが現在では、コンタクトセンターの在宅化やAI(人工知能)技術の採用などが進み、その姿は時代と共に変わってきている。

オムニチャネル化と在宅対応が進む

 変化の1つが、種々のコンタクトチャネルに対し顧客接点を設け一元的に運用する「オムニチャネル」への対応である。

 顧客や消費者のニーズ、購買体験などの変化とともに、問い合わせチャネルは増加している(図1)。電話に加え、メールやチャット、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)、スマートフォン用アプリケーションなど通信手段は増加してきた。ユーザー行動の変化に企業側も対応しなければならず、コンタクトセンターにおけるオムニチャネル化が進んでいる(図1)。

図1:コンタクトセンターが対応しているチャネルの状況。複数回答(出所:『コールセンター白書2020』、リックテレコム)

 もう1つの大きな変化がコンタクトセンター業務の在宅化だ。コンタクトセンターの運用システムは、PBX(構内交換機)や電話回線などの環境に大きく依存するため従来は、テレワーク環境への移行は難しいと考えられてきた。それが最近はテクノロジーの進化を背景に在宅コンタクトセンターが成立するようになっている。

 コンタクトセンターの在宅化は以前から推奨されていた。それがコロナ禍になり、多くのオペレーターが1カ所に集まるコンタクトセンター職場は“3密”を生みクラスターの発生原因になるため、在宅化への取り組みが加速しているのが現状である。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が在宅コンタクトセンターを増やしていることは統計にも現れている。コロナ禍で直面している課題について、米国にあるコンタクトセンターを調査した報告書『コンタクトセンターのリモートワークソリューションのためのインナーサークルのガイド』(ContactBabel)によれば、日常的に在宅で作業するコンタクトセンターのオペレーターの割合は、コロナ以前の14%が2020年4月には71%にまで急増している(図2)。

図2:COVID-19前後のコンタクトセンターの在宅勤務率の変化(出所:『コンタクトセンターのリモートワークソリューションのためのインナーサークルのガイド』、ContactBabel)

 同調査は、コロナの影響により在宅化が急増するものの、緊急対応的な在宅化が終われば、その比率は低くなると予想する。それでも、コロナ以前と比べれば、その割合は倍増以上に高まる点に注目したい。

 COVID-19以前、コンタクトセンターにおける在宅勤務の最大のメリットは、スタッフ数の柔軟性の向上だった。システムをクラウド化することで、物理的なロケーションの制約なしに勤務できるようにし、必要に応じて在宅勤務するオペレーターを大量投入すれば、コールが集中する「コールスパイク」への対応では大きな利点になる。

 コロナ対応で在宅業務を経験したコンタクトセンターでは、意外にすんなりと在宅へ移行できたケースも多い。COVID-19が再拡大した場合などに備え、BCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)的な観点も含め、在宅化は恒久的な手法として定着していくと考えられる。