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移動データのビジネス活用プロジェクトの要諦【第2回】

弘中 丈巳(スマートドライブ 執行役員CRO)
2021年9月27日

Quick Winの実践がプロジェクトの連鎖を生みだす

 これら3つのポイントを意識し、Quick Winを実戦している例として、出光興産と弊社でのプロジェクトを紹介します(図4)。

図4:出光興産とスマートドライブによるQuick Winの実践例。各プロジェクトでQuick Winを意識することで、プロジェクトの連鎖が起こっている

 両者が取り組んだ最初のプロジェクトは、岐阜県飛騨高山市と千葉県館山市で2020年6月に開始した超小型EV(Electric Vehicle:電気自動車)を使ったカーシェアリング事業です。このプロジェクトのQuick Winは「超小型EVから取得した走行データの可視化」です。

 ここで可視化された走行データを確認しながら次のQuick Winを探し出し、次のプロジェクトとして2020年10月に開始したのが、位置情報データなどに強みを持つナイトレイを加えた、超小型EVシェアリングと地域の観光データを組み合わせる実証実験です。

 ここでのQuick Winは、観光地の課題である観光資源の最大化(観光地での滞在時間・訪問スポット数の向上)です。そのために、最初のプロジェクトで可視化した走行データに、SNS(Social Networking Service)データを掛け合わせることで実現しました。

 その後も2021年1月からは、日本ユニシスを加えて、車両管理システムとエネルギーマネジメントシステムを連携させる宮崎県国富町役場での実証実験にもつながっていきます。

 国富町は、「人と環境にやさしいまちづくり」を掲げ自然エネルギーの普及に取り組んでいます。今回の実証プロジェクトでは、収集したEVの車両データや移動データを軸に、エネルギー利用の最適化を図るのが目標です。

 これらのプロジェクトは、それぞれのQuick Winを意識して進めたことによって、関連し合う次のプロジェクトへの展開が広がってきました。その過程でのディスカッションなどによるBig Thinkの存在も決して小さくはありません。

 Quick Winの考え方を軸に、Big Thinkを忘れることなく、常に両者を行き来しながらプロジェクトを進めてきたことが、スピード感を維持した状態での移動データの実ビジネスへの活用が進んでいると感じます。両者の取り組みは、さらに新しいフェーズへと突入しています。

弘中 丈巳(ひろなか・たけみ)

スマートドライブ 執行役員CRO(Chief Revenue Officer)。日系コンサルティング会社にてキャリアをスタート。北海道支店長として拠点立ち上げに携わった後、セールスフォースドットコムを経てマルケトのコマーシャル営業部の責任者として組織拡大に従事。2019年にスマートドライブに参画し、マーケティングからカスタマーサクセス、ビジネス開発までを統括し収益の最大化に取り組む。