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移動データの価値を高める周辺領域とのデータ連携【第4回】

石川 信太朗(スマートドライブ Mobility Data Scientist)
2021年12月2日

第3回では車両から取得できる移動データの詳細と、その活用方法について解説しました。今回は、移動データと組み合わせることで早期の課題解決を可能にする周辺データについて、事例を元に紹介します。

 前回お伝えした通り、車両から取得できる移動データからは種々の課題解決が可能です。安全運転推進による事故削減、車両管理の工数削減、余剰車両の削減によるコスト削減などです。

 一方で、自動車業界は今、CASE(Connected:ネット接続、Autonomous:自動運転、Sharing:共有、Electric:電動化)に代表される大きな変化が想定以上の速さで進んでいます。変化する顧客課題をとらえ、その解決に向けたサービスを1社だけで提供していくことは難しい状況にあります。

変化が激しく複雑化するMobility領域の課題

 車両から取得できる移動データだけでは解決が難しい課題として、弊社顧客企業からは、以下のような声を聞く機会が増えています。

・トラックの荷量をリアルタイムに把握し積載率を最大化したい
・EV(電気自動車)のSOC(State Of Charge:充電率)をリアルタイムに把握したい
・どの場所に、どれくらい訪問しているかを知りたい

 最近、特に多いのがアルコール検知器との連携ニーズです。2022年4月に酒気帯びの目視確認と記録保存が義務化されるのに続き、2022年10月からはアルコールチェッカーによるアルコールチェックの義務化が施行される予定だからです。

 2021年11月時点では、シガーソケット型の車載器ではアルコールチェックはできませんし、EV車両のSOCを測ることもできません。これらの課題に対し、どのようなソリューションを提供できるかは、Mobiliy領域のスタートアップにとって大きな論点です。

 単体では難しい課題に対し、最適なサービスを組み合わせて解決を図る考え方として「Best-of-Breed」があります。ソフトウェア業界ではすでに一般的な考え方です。これに対しモビリティ業界では、1社の製品ですべてのニーズを満たそうとする「Suite」という考え方を前提に設計された製品が多くあります。利用する側にすれば、それぞれの領域で最適なサービスを選択しデータを連携させるBest-of-Breedはハードルが高い状況が続いているのが実状です(図1)。

図1:課題解決に向けては、個々に最適なサービスを組み合わせる「Best-of-Breed」と、1つですべてを満たそうとする「Suite」の考え方がある

 しかし、上述した課題のように、解決に必要なデータのすべてを1社で取得するのは、ほぼ不可能です。加えて、様々な機能を実現するための基盤やソフトウェアを開発・運用するためには、時間もコストも掛かるうえ、変化に追従するための柔軟性も制限されます。

 それだけに今後は、Best-of-Breedを前提としたサービスやデータの連携に積極的に考え、取り組んでいく必要があるでしょう。

 しかし、そう都合良く、最適な組み合わせが見つかるのかと思われるかもしれません。以下では、上述した課題などに対し、弊社が提供する「Mobility Data Platform」との連携例を挙げることで、その可能性をお伝えしたいと思います。