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車から移動データを取得する手段とその中身【第3回】

山本 剛央(スマートドライブ モビリティデータコンサルタント)
2021年10月25日

第2回では、移動データを実ビジネスに活用する際のポイントや実プロジェクトを紹介しました。今回は、自動車から取得できる移動データとは、どのようなデータなのか、取得した移動データからどういったことが分かるのかついて、具体的に紹介します。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により人々の移動データ(人流データ)に触れる機会が増えてきました。第1回で触れたように、人流の増減に関するデータの多くは、スマートフォンのGPS(全地球測位システム)による位置情報を使って集計されています。GPSのデータは、最も身近で用途が分かり易い移動データの1つです。

 では、自動車から取得できる移動データとは、どのようなものなのでしょうか。その取得方法や活用方法をイメージできるよう、自動車から取得できる移動データについて具体的に紹介します。

車両に後付けする方法でも多くの移動データが取得できる

 自動車から移動データを取得する方法は複数あります。それぞれで、データを手に入れるまでのコストや工数、手間などが異なります。そうした「データ取得難易度」によって、取得方法を並べたのが図1です。

図1:自動車から移動データを取得するための方法とデータ取得難易度の関係

 種々の取得方法の中で、最もデータ取得難易度が高いと言えるのが「CAN(Controller Area Network)データ」です。CANは車内LANの標準プロトコルに採用されている通信の国際規格であり、CANデータは、同プロトコル経由で取得できる車両内部のコンピューター情報を指します。

 CANデータには、車両の位置情報や走行距離情報などに加え、警告灯の点灯やワイパー起動の有無、ドアの開閉、通算平均燃費、EV(電気自動車)における電池残量など、車両に関して数多くのデータが含まれます。

 しかし、多くの場合、自動車メーカーから提供を受ける必要があるため、プロジェクト規模にもよりますが、データ利用までの難易度はかなり高くなるのです。

 CANデータ以外の取得方法では、データ取得までの難易度はぐっと下がります。基本的に車両への後付けが可能な方法だからです。

デジタルタコメーター/ドライブレコーダー

 デジタルタコメーターは運送事業者等の大型車両への装着が義務付けられており、機器にもよるものの、GPSによる位置情報、エンジン回転数の変化、急加速・急減速、ドアの開閉などのデータを取得できます。走行中の録画がメインのドライブレコーダーにも、GPSによる位置情報、運転中の衝撃イベント検知、速度情報の取得などができる機器が存在します。

 デジタコ/ドラレコによる移動データの取得では、プロジェクトや課題に合わせて機器を選択すると良いでしょう。これら2つの方法では多くの場合、車両への設置作業が必要なため、取り付け工賃が別途発生するため、コスト面では後述する方法よりも高くなります。

IoTデバイス/GPSロガー

 自動車を対象にしたIoT(Internet of Things:モノのインターネット)デバイスやGPS情報の取得に特化したGPSロガーでは、GPSによる位置情報や、速度、走行距離、急イベントの検知といったデータを取得できます。

 IoTデバイス/GPSロガーの最大のメリットは、設置作業なしで車両へ装着できることです。充電式やシガーソケット給電式など様々のタイプが存在します。車両に設置すればすぐに利用できます。弊社でもシガーソケット給電式のIoTデバイスを提供しています。

スマートフォン用アプリケーション

 位置情報・移動データの取得に特化したスマホアプリを使用することで移動データの取得・蓄積が可能です。スマホを所有していれば良く、移動データの取得では最も難易度が低い方法です。ただしデメリットとして、利用するアプリの仕様に依存すること、GPSの精度がスマホ本体に依存しデータ精度が低くなる可能性があることがあります。

 いずれの取得方法を選択するかにおいては、取得したデータを活用する観点から、以下の点を考慮する必要があります。

考慮点1 :どのような形式のデータが取得できるのか
 ・必要なデータ項目が含まれているか
 ・必要な頻度でデータが取得されているか
考慮点2 :データはどこに蓄積されるのか
 ・どのようにデータにアクセスできるのか
 ・自社システムなどとの連携は可能か