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  • 顧客接点を支えるeKYCの基礎知識

eKYCの民主化進め事業者と利用者の双方に多様な選択肢を提供する

本人確認特化のTRUSTDOCKが描くKYCの世界観

2021年9月1日
TRUSTDOCK 代表取締役/CEOの千葉 孝浩 氏(左)、Public Affairs担当の神谷 英亮 氏

「eKYC(eKnow Your Customer)」の適用範囲は幅広い。金融や行政はもとより、小売りや医療、教育や人材、CtoC(個人間)など様々なサービスのオンライン化が進むなか、本人確認が必要な手続きや取引は、あらゆる業種・業態に広がり、内容も多様化してきているからだ。そうしたニーズの変化を先取りし、多彩なeKYC関連サービスを提供するが、本人確認に特化するTRUSTDOCK(トラストドック)である。同社が見据えるのは、「社会に安心を提供する身元確認・本人確認のためのインフラ」だ。

企業サービスのデジタル化における“2周目の課題”とは

 「KYC(本人確認:Know Your Customer)」は、生活の様々な場面で日常的に求められている。銀行の口座開設や自治体での手続きはもとより、スマートフォンや保険の契約、資格試験の受験、体調不良時の受診、タバコや酒など年齢制限のある物品の購入、ネットカフェの利用、人材紹介やマッチング、各種レンタルやシェアリングなど、様々な取引において、身元確認を伴う本人確認は欠かせない。

 ただ、それらがリアルな対面でのみ実施されている限りは、事業者と顧客の双方にとってそれほど重い負担にはならない。窓口で運転免許証などの身分証を提示し、その場で確認すれば済んでいたからだ。

 ところがオンラインによる非対面での手続きや取引になると話は大きく違ってくる。なりすましが容易になり、ネットの向こうにいる相手が本人であることを証明・確認することが途端に難しくなるからだ。例えば、オンラインで資格試験を受けている者が、正式な受験番号(ID)とパスワードを用いていたとしても、それだけでは本人だとは証明できない。

 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を受け、あらゆる業種においてサービスのデジタル化が急速に進んでいる今、本人確認の問題が改めて浮上している。

 本人確認に特化し早くから、この問題に正面から取り組んできたTRUSTDOCK 代表取締役/CEOの千葉 孝浩 氏は「事業者はCOVID-19対応として、自社サービスをデジタルに展開することで精一杯だったはずです。そしてオンラインでのサービスを展開し始めたところ、手が回っていなかった本人確認という“2周目の課題”に多くの事業者が気づき始めているのです」と語る。

eKYCの多種多彩なAPI群を提供

 「eKYC」は、KYCをオンライン上で実施するための仕組みやサービスだ。従来、eKYCといえば、犯罪収益移転防止法などの法規制が定義する“狭義の本人確認”のイメージが強かった。これに対してTRUSTDOCKは、オンラインでの非対面なケースをはじめ、デジタル環境で実施するあらゆる身元確認・本人確認を“広義のeKYC”と位置付け、それぞれのニーズに幅広く対応するためのサービスを提供している。

 すでにTRUSTDOCKのeKYCサービスを利用する事業者は、業界・業種を問わず100社を超える。特にオンラインでのビジネス展開を目指すベンチャー企業や、既存企業の新規事業部門からの引き合いが急拡大しているという。

 TRUSTDOCKのeKYCサービスの特徴は、各種サービスを単なるツールとして提供するのではなく、KYCの専門ベンダー(本人確認プロバイダー)として、業務別にAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)化したクラウドサービスに、関連業務の運用体制を加味することで「本人確認業務の一括アウトソーシング」(千葉氏)として提供することだ(図1)。様々なニーズを持つ事業会社のKYC業務をワンストップで代行する。

図1:多様なUI(User Interface)とAPIを組み合わせてKYC業務を一括アウトソーシングする

 そのため提供するAPIも多岐にわたる。身分証専用カメラ、補助書類確認、反社リスク確認、個人身元確認、口座情報確認、ハガキ&封筒郵送、ID-Selfie(本人確認書類と顔を一緒に撮影した画像)、個人番号取得、法人確認などなどだ。TRUSTDOCKは「顧客確認審査で必要になるeKYCのための機能を可能な限りAPI化しラインナップを拡充していく」(千葉氏)という戦略を掲げているためだ。

 千葉氏は、「私たちはお客様の黒子に徹した存在として、eKYCと、従来型のKYCプロセスのデジタル化の両方の課題を解決します。オペレーターによる目視チェックが必要な業務なども24時間365日の体制で対応しています」と話す。千葉氏によると、eKYC業務を一括アウトソーシングすれば、自社で業務環境を構築する場合に比べ、およそ30〜50%、場合によってはそれ以上のコスト削減が実現できる。