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  • 顧客接点を支えるeKYCの基礎知識

利用場面が広がる「eKYC」の基本【後編・活用例】

齋藤 公二(インサイト合同会社 代表)
2021年10月5日

サービスのデジタル化が進む中、利用ニーズが高まっているのが「eKYC(電子本人確認:electronic Know Your Customer)。前編では、eKYCの基本をお伝えしました。後編では、eKYCを採用している各種サービスを紹介します。いずれも良く知られるサービスなので、実際に利用したことがあるかもしれません。

 「eKYC(electronic Know Your Customer)」は、電子的な本人確認の仕組みです。KYC(Know Your Customer)は「顧客を知る」という意味であり、金融業界では、銀行口座を開設する際などに必要な本人確認手続きのことを指します。

 本人確認の手続きは、マネーロンダリングなどの不正を防ぐために、法律で定められています。従来は対面や郵送で確認しなければなりませんでしたが、2018年11月に「犯罪収益移転防止法(犯収法)施行規則」が改正されたことで、特定事業者の本人確認においては、PCやスマートフォンなどによるオンラインでの本人確認が可能になりました。

国内のeKYC採用はキャッシュレス決済サービスから

 犯収法の改正以後、国内では相次いでeKYCを採用したサービスが登場し話題になりました。なかでもいち早く対応したのが、メルカリの「メルペイ」やLINEの「LINE Pay」などのキャッシュレス決済サービスです。

 メルペイでは2019年4月23日から、eKYCを用いた「アプリでかんたん本人確認」の提供が始まりました。それ以前は、インターネットからの申し込みであっても、本人確認書類のアップロードと、自宅での転送不要郵便の受け取りが必要でした。アプリでかんたん本人確認では、オンラインで本人確認を完了できるようになりました。

 アプリでかんたん本人確認における本人確認の方法には、(1)マイナンバーカード読み取り形式と(2)自撮り形式の2つがあります。マイナンバーカード読み取り形式の場合、NFC(Near field communication:近距離無線通信))機能を搭載するスマートフォンでマイナンバーカードを読み取ります。

 一方の自撮り形式の場合は、本人確認書類(運転免許証、在留カード、マイナンバーカード、パスポートの4種類)と、本人の顔写真をスマートフォンのカメラで撮影し送信します。

 LINE Payは2019年5月、eKYCを用いた「スマホでかんたん本人確認」の提供を開始しました。それまでLINEは、銀行連携タイプのeKYCを提供しており、本人確認時にはLINE Payに銀行口座を連携させなければなりませんでした。連携には、LINE Payから各金融機関のWebサイトにページ移動し、各行のセキュリティポリシーに準じた情報を入力する必要がありました。

 スマホでかんたん本人確認では、本人確認書類(運転免許証、マイナンバーカード、在留カード、運転経歴証明書、特別永住者証明書、日本政府発行のパスポートの6種類)の撮影と、本人情報の入力により本人確認がオンラインで完結します。本人確認書類の撮影では、表面/裏面に加え、書類の厚みを撮影するほか、本人の顔写真(顔正面と動きの撮影)も撮影します。