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あなたの会社のDXが進まない理由【第1回】

小川 裕史(サイトコア ソリューションコンサルタント)
2022年4月7日

データを本当に活用できる組織体制が不可欠

 では、どうすればデータ活用できる組織になれるのか。海外では、専門のコンサルタントがデータ活用をテーマにしたワークショップを実施し、組織全体で課題解決に当たることが多い。

 具体的には、経営層や中間層、現場担当者など様々な階層・役割の人が集まり、目指す方向や課題、データ収集に関する疑問や、やりたいことなどを共有しあう(図3)。ワークショップは数日にわたって開催することもあれば、1日集中型の場合もある。

図3 データ活用に向けたワークショップ

 ワークショップへの参加に当たっては、各層のそれぞれが次のようなことを意識すると良いだろう。

(1)経営層/C-Suiteが意識すべきこと

 データ活用に対し「なぜ必要なのか」という理由を掘り下げ、現場の課題感を共有し、優先順位を決めて適切に課題解決に当たる体制を組んでいくことが望ましい。

  現場の課題感やデータに関しては、一般的に経営層よりも現場を担当している中間層や社員のほうが詳しいことが多い。例えばEC担当者が「パーソナライズが必要です」と進言しても、「ROI(投資対効果)はどれだけ見込まれるか」「コストがかかるだけではないか」というだけでは前には進まない。

(2)中間層/現場担当者が意識すべきこと

 営業現場やデジタルチャネルの担当者は、「こういうデータがあればこんなことができる」など多くのアイデアを持っている。そのアイデアの実現が自社にとって、なぜ必要なのかを、「他社がやっているから」ではなく、経営層にロジカルに説明するようにしたい。

 経営層は、現場の詳細を把握しきれていないことはある。だが、事業全体の方向性や将来については常に考えている。現場の課題や改善アイデアを理解できれば「こういうことも必要ではないか」など建設的な指南も出てくるだろう。

(3)IT担当者が意識すべきこと

 まずは現場がやりたいことを実現するためには、技術的にどういう課題があるのか、そもそも社内にどんなデータがあるのかを共有することが第一歩である。経営層がゴーサインを出した時、どこをどのように優先させれば実現できるのかが見えてくる。

 IT担当者にはシステムの安定稼働が求められる。「データなら何でもかんでも集約して分析したい」という要望だけに関わるのは難しい。

 データを活用しDXを推進している企業は、いい意味で経営層がトップダウンである組織が多い。方針を決めたら「責任は自分が取るから、あとは現場に任せる」というタイプだ。

 事業全体をリードする立場と、現場でデータを活用する立場とでは、データへの向き合い方が異なる。マーケティングや事業促進に必要なデータは、ビジネス環境の変化によって刻々と変化するため、現場の知見が必要だ。しかし、そうした組織を作り上げ、データから得た知見を元にDXを進めていくためには、適切な判断とリーダーシップを発揮できるトップが不可欠である。

 こうした意識を組織全体で共有できれば、DXに向けたデータ活用成功の道に踏み出したも同然だ。次回は、データ活用を進める具体的な仕組みについて、ビジネス環境とITの両面から解説する。

小川 裕史(おがわ・ひろし)

サイトコア ソリューションコンサルタント。2009年オムニチュア(現アドビ)入社。以来、複数企業でSaaS型デジタルマーケティングソリューションに特化したコンサルタント/プリセールスとして12年間従事。日本ヒューレットパッカードでは、パーソナライズ・A/Bテスソリューション「Optimost」の日本市場での立ち上げ業務を担当し、多くの企業への導入を手掛けた。2021年8月サイトコア入社。同社事業の新しい柱である「DXPソリューション」ビジネスの日本での拡大に向け様々な業務を担当している。