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全社DXの価値実現に向けた出口戦略立案の6つのステップ【第9回】

塩野 拓、南ヒョンヨン(KPMGコンサルティング)
2023年5月8日

ステップ2:想定創出時間の算出

 ここでは、ステップ1と並行して、現状業務の初期調査を実施し、想定創出時間を算出する。まず、対象範囲の現状業務を洗い出し、業務概要、使用システム・ツール、作業頻度、作業時間、顕在課題・リスクなどを一覧化した「DX施策候補リスト」を作成する。

 すべての業務を改善対象にすると、効果の小さな業務も含まれてしまい整理が非効率になる。重点となる工数負担、ミス頻度・影響度、リードタイム超過、コンプライアンス順守度といった改善対象を仮説的に考えたうえで、優先度の高い業務を中心に10~15パターン程度に整理していく。

 次に、整理した10~15パターンの業務内容を定型・非定型に分類し、定型業務を中心に業務を見直しながら、効率化に寄与するデジタル施策を検討し、改善後の業務を導いていく。

 業務の見直しでは、業務目的から本当に必要かという視点から業務そのものを排除・削減できないか、効率化や品質向上の視点からは自動化・容易化・集約化・標準化できないか、価値創出の視点では強化および人がやるべき仕事はどこかを、それぞれ検討する。ステップ1で得た「期待する業務/行うべき業務」や「デジタル施策仮説」も参考にする。

 最後に、現状業務とDX後の業務を比較し、想定創出時間すなわち工数削減余地を算出する。これが「ワークシフトの源泉」になる。デジタル施策の導入プロセスとしては、この後に効果の見込まれる業務に対して、要件定義フェーズに進めて詳細に現状業務をヒアリングし、具体的な改善後のプロセスを描いていく。想定創出時間は、ステップ3のインプットとしても活用する。

ステップ3:付加価値業務と想定創出時間の紐づけ

 ここでは、経営層と管理職層の視点から、上層部として一般社員層に行ってほしい業務と、現場の社員が行いたい業務、行うための時間を1つにつなげる。全社経営・デジタル戦略は日々のオペレーションに反映されなければ、新たな価値を生み出せないからだ。

 各業務を1つにつなげるにはまず、役員と管理職の想いを改善後の現場で具現化できる準備として、ステップ1で役員層と管理職層にヒアリングした「全社戦略・業務ビジョン」と、管理職層と一般社員層にヒアリングした「効率化後に行いたい業務要望」を紐づける。そのうえで、「効率化後に行いたい業務要望」とステップ2で得た「想定創出時間」をさらに紐づけていく(図2)。

図2:付加価値業務と想定創出時間の紐づけと検証のアプローチ

 これらの紐づけがうまくいかない場合は、例えば、以下のような再検討が必要である。

「全社戦略・業務ビジョン」と「効率化後に実行したい業務要望」の間で”ズレ”がある場合

 全社戦略・業務ビジョンが社員へ浸透していない可能性があり、社員への啓蒙活動の強化が必要である。ただし、全社的な啓蒙活動による社員へのビジョンの浸透には長期間にわたる活動が必要な場合が多い。対象部門への迅速な”ズレ”解消方法としては、現場リーダーは経営層の想いを咀嚼し、それらの内容を現場社員に説明しながら、「効率化後に実行したい業務要望」を修正することも効果的と考える。

「全社戦略・業務ビジョン」と「デジタル施策」の間で”ズレ”がある場合

 そもそもの全社戦略・業務ビジョンとデジタル施策との整合性に不備がある可能性があり、デジタル施策の見直しを検討する。KPMGでは、この「逆方向の体系再整理」を「DX-Rebuildアプローチ」と呼んでいる。

「効率化後に実行したい業務要望」と「想定創出時間」の間で”ズレ”がある場合

 改善業務の対象範囲が小さい、もしくは効果の小さいデジタル施策を選定している可能性があり、現状調査を再実施が必要となる。