- Column
- DX時代の障壁と突破口
全社DXの価値実現に向けた出口戦略立案の6つのステップ【第9回】
前回、DX推進による真の成果を得るために不可欠な「DX出口戦略(DX-Exit)」について解説した。今回は、DX出口戦略の計画立案から実行までの具体的な進め方について、6つのステップにわけて解説する。
<第9回のポイント>
- 現場リーダーが、DX出口戦略の立案・計画のすべてを自力で策定・検討することは困難である。自部門の関係者はもちろん、経営層やコーポレート部門を巻き込みながら検討すべきである
- 「ワークシフトによる変化」に直接影響される一般社員層への「対応・ケア」も重要である
- 付加価値業務と、デジタル施策適用による想定創出時間とを紐づけし、ワークシフト計画の蓋然性(確からしさ)を検証し、ワークシフト実行後も結果を継続的にモニタリングし、計画を適宜修正していくべきである
DX推進後のワークシフトに向けDX出口戦略を設計する
「DX出口戦略(DX-Exit)」の立案からワークシフトの実行までは、大きく6つのステップに分けられる。以下、各ステップにおける取り組みについて解説する。
ステップ1:付加価値を生む効率化後の業務ビジョンと業務要望の明確化
付加価値を生む業務とは、新規事業開発や新商品企画、顧客への提案活動、業務改善活動など、企業の売り上げ向上や競争優位の拡大・強化において必要な「企画」「判断」「創造」を伴う、人にしかできない業務のことを示す。
第8回で解説した通り、デジタルトランスフォーメーション(DX)で果たすゴールは、企業活動に注いでいる「インプット」を減らすだけではなく、浮いたリソースを活用して「アウトプット」を増やすことである。DX出口戦略立案の最初のステップでは、DXで創出すべきアウトプット、つまり付加価値とそれらを生み出すために今後新たに発生する業務を明らかにし、ゴールを明確にする必要がある。
具体的には、会社や事業部にとって行うべきと定められている業務ビジョンを理解し、それらを達成するための付加価値の高い業務は何か、業務効率化後の創出時間を使うべきコア業務は何かを明確に特定・整理・定義する。
それらを網羅的に把握するためには、現場リーダーは自部門で進める予定のデジタル施策に関連する役員層(トップ)、管理職層(ミドル)、一般社員層(ボトム)の各層に対し、アンケートまたはヒアリングを進めることが効果的である(図1)。
それぞれの確認視点を以下に示す。各職位の層に対して複数人に確認していく。
対役員 :全社的な経営方針、業務ビジョンやトップの想い、経営目線での課題感を確認する。全社的な事業・組織に基づいた業務要望(管理職にどのような業務へワークシフトさせたいか)を確認する
対管理職 :担当する部や課における業務ビジョンと課題感、自身が担当する部や課での業務要望を確認する。業務要望には、管理職自身のワークシフト先と、部下のワークシフト先の両方が含まれる
対一般社員 :自身の担当領域での課題や業務要望(自身がどのような業務へワークシフトしたいか)を確認する。業務要望には、全くの新規業務と、時間が足りず十分にできていない従来業務の両方が含まれる
現場リーダーは、自身が管理職として答えても良いし、関連部門の管理職に依頼するでも良い。確認した結果について、それぞれの層における共通意見や意見の差などを整理する。各層間の共通意見や相違は、「ステップ3:付加価値業務と想定創出時間の紐づけ」で改めて整理する。