• Column
  • 成果を最大限に引き出すワークプレイスのあり方

NTTの働き方改革、従業員に選ばれる職場に向けリモートワークを基本に推進

「DIGITAL X DAY 2022 働き方改革を実現する『チームビルディング』」より、NTT 総務部門 担当部長 野村 健悟 氏

ANDG CO., LTD.
2023年2月1日

居住地の制限もなくし転勤や単身赴任も不要に

 これまでもNTTグループには在宅勤務制度はあったものの、1カ月に利用できる日数に上限があった。リモートワークの推進に向けては、在宅勤務の回数や場所の制限を撤廃したほか、光熱水道費に相当する「リモートワーク手当」も設けた。コアタイムがあったフレックスタイム制も、「在宅では、さまざまな事情から仕事が分断されることが想定されるため、コアタイムなし分断可のスーパーフレックスとした」(野村氏)

 2022年からは、居住地の自由度を高めるための新制度「リモートスタンダード」を導入した(図2)。従来の「出社が基本」を改め「リモートワークが基本」とし、出社が必要なときに申請するスタイルにした。同制度の適用はオフィスワーカーを中心に約3万人から始めている。

図2:2022年に開始した「リモートスタンダード」制度の概念

 野村氏は、「転居や単身赴任といったライフに大きな影響を与える移動が発生しないことを目指している」と制度の狙いを説明する。同制度では、東京へ単身赴任していた社員が地元の大阪や九州などへ帰ることもできる。これまでに首都圏で単身赴任していた約1500人のうち、15%にあたる約200人が地元へ帰り自宅からのリモートワークに切り変えている。

 新しい働き方のトライアルとして、従業員の住む場所ではなく、会社の組織を分散する取り組みも始めている。当面は「災害対策として東京のオフィスに何かあった際に別の場所から業務を継続できないかを中心に実験している」と野村氏は説明する。

 リモートスタンダート制度開始後、育児や介護などのために短時間勤務を選択する従業員が減っているという。野村氏は「そうした従業員がフルタイムで働くことは、新たな職場や新たな仕事へのチャレンジを後押しすることになる。自律的な働き方になり、資格取得や副業などに取り組む従業員が登場している」と新制度の成果を強調する。

 年1回実施している従業員満足度調査の結果でも、2019年度と2020年度の比較では、「働きやすい職場環境を醸成している」「効率的な働き方ができる」「仕事と生活を両立できている」などの項目で男女ともに数値が向上。特に女性の満足度が大きく向上した(図3)。

図3:毎年実施している従業員満足度調査による2019年度の2020年度の比較

 リモートワークの生産性については、オフィスワークと比べ「維持できている」または「向上した」とする回答が8割に上る。「リモートワークでもオフィスと変わらない働き方ができるように取り組んできた成果だ」と野村氏は見る。

生産性を下げるコミュニケーションの課題の解決に注力

 今後は、「生産性の向上と、生産性が下がった要因として挙げられた『上司やチーム内でのコミュニケーションの向上』に取り組んでいく」(野村氏)。リモートワークのコミュニケーションに対しは、「相手の姿が見えず気軽に話しかけられない」「会話をしていても相手の反応が見えない」「職場の状況がわからない」といった課題が指摘されている。

 これら課題を解決するためのポイントとして野村氏は、「雑談」「リアクション」「見える化」の3つを挙げる。

 雑談は、「チームの雰囲気づくりや人間関係の構築などに、とても重要な要素」(野村氏)に位置付ける。リモートワークでは偶然の出会いがないため、雑談中心の定例ミーティングを開催するなど積極的に雑談をする機会を作っていく。「雑談が活発だとチームビルディングがうまくいく」(同)という事実もある。

 リアクションは、「部下に上司が関心を持っていることを伝えるために重要なポイント」(野村氏)だ。実際、新任マネジャーには、「部下に話しかけられたら、必ず部下のほうに顔を向けて反応するように伝えている」(同)という。リモートワークでも同様に、部下の発信に対しチャットツールのリアクションボタンなどでの反応を促す。

 見える化は、周囲の状況がわからないリモートワークにおいて、チームメンバー全員が自ら発信することを指す。野村氏は、「困っていたり、手が空いていたりといった自身の状況を言葉にして発信することで、情報の共有を図っていく」と説明する。

 いずれも「オフィスワークでは自然発生するため特に意識してこなかったポイントだ。だがリモートワークでは、意識して実施する必要がある」と野村氏は強調する。

従業員の成長と事業の成長の好循環を実現したい

 従業員とのエンゲージメントの向上に対し野村氏は、「従業員の成長が事業の成長につながり、事業の成長によって生まれる新しい仕事に従業員がチャレンジすることで、さらなる成長をする。こうした好循環を実現させたい」とする。そのために「従業員の専門を高める仕組みや多様な人材の確保、人材が生き生きと仕事ができるリモートワークのような柔軟な働き方を推進する必要がある」(同)と続ける。

 「今は従業員が会社を選ぶ時代だ。自身が成長できる仕事があり、自身の生活を充実できる職場が選ばれるようになっている。NTTグループは、従業員に選ばれる職場環境の整備に引き続き取り組んでいく」と野村氏は力を込めた。

DIGITAL X DAY 2022 Online Liveオンデマンド

NTT(日本電信電話)総務部門 担当部長の野村 健悟 氏による講演「従業員に選ばれる職場に向けリモートワークを基本に柔軟な働き方を推進」