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音質の悪いオンライン会議は従業員にストレス与え判断力を下げる
「DIGITAL X DAY 2022〜働き方改革を実現する『チームビルディング』」より、シュア・ジャパンの大友 裕己 氏
ハイブリッドワークの浸透により、会議をオンラインで開く機会が増えている。そこで顕在化してきたのが“音”の問題だ。オンライン会議における音質の低下は従業員のパフォーマンスに影響するとされる。音響メーカーのシュア・ジャパンでインテグレーテッド・システムズ シニアディレクターを務める大友 裕己 氏が、2022年12月に開かれた「DIGITAL X DAY 2022〜働き方改革を実現する『チームビルディング』」(主催:DIGITAL X)に登壇し、オンライン会議における音の課題と解決方法を解説した。
「オンライン会議の成功には音声が重要な役割を果たしている」――。音響メーカーの米Shureの日本法人でインテグレーテッド・システムズのシニアディレクターを務める大友 裕己 氏は、こう指摘する。オンライン会議では「映像が途切れても会議の進行が止まることはない。だが、音が聞こえないと続行できなくなってしまう」(同)からだ。
オンライン会議のトラブル・不安の8割は“音”によるもの
Shureの主力製品はマイクやイヤホンなどの音響機器。そこで培ってきた音響技術を使って今は、会議における音響に関連する製品領域にも注力している。
その一環としてシュア・ジャパンは、日本を拠点とする従業員1000人以上の企業に勤務する1000人を対象にオンライン会議に関する意識調査を実施した。その結果をまとめた白書『ニューノーマルな会議環境を目指して』によれば、回答者の88%が「オンライン会議ではトラブルが多い」と回答している。トラブルや不満の内容で多いのは、「ノイズ」「聞き取れない」「エコー」「音声が途切れる」「操作がわからない」の5つであり、うち4つが“音”に関するものだ。
「オンライン会議のトラブルには、ニューノーマル特有の課題があると考えられる。例えば、出席者がマスクを装着していると音はこもりやすく、コロナ対策のアクリル製パーテーションを設置すれば音は聞き取りにくくなる。こうした課題が音響機器の配置を難しくしている」と大友氏は説明する。
これらの課題に対し、オンライン会議の管理者は設備投資を検討している。対象には「会議用システムの導入」(49%)、「マイクロホンなど入力系機器の更新」(25%)などが挙がる(図1)。大友氏は、「企業がオンライン会議の“音”に着目し始め、積極的に投資する意向があることが伺える」とみる。
さらに、シェア・ジャパンがNTTデータ経営研究所と2021年に共同で実施した実証実験において、「音質のよい会議」と「音質の悪い会議」の双方を経験した参加者への影響を観察したところ、「音質の悪い会議」の参加者には、ストレスや不快感情を活発化する心拍数の増加や、眉間に縦じわを生む皺眉(しゅうび)筋の活発化が見られた。「オンライン会議の音質が低下すれば、従業員のストレスと判断力の低下を招く」(大友氏)ことにもなる。
オンライン会議の音質を左右する6つの“壁”
オンライン会議における音質の重要性は明らかだ。だが、「オンライン会議の仕組みを情報システム部門などが整備する場合、配慮しなければならない壁がある」と大友氏は指摘する。(1)システム設計、(2)設備・配線、(3)動作テスト、(4)部屋に合わせた設え、(5)監視・管理、(6)ユーザートレーニングの6つである。
具体的には、会議室の大きさやテーブルレイアウトなどを念頭に置いた機器の選定、工期や予算の制約、既存機器を活用しながらの設備調達などだ。ほかにも、機器が正常に動作するかどうかのテストや、会議参加者への操作トレーニング、導入後に各会議室が予定通り稼働しているかの定期的な監視などだ。
これら課題の解決策として大友氏は2つの方法を挙げる。1つは、SI(システムインテグレーション)事業者などの専門業者に依頼する方法。設計から工事納入、運用・保守るまでを委託できる。SI事業者が構築を担当することを想定した製品群として「MICROFLEX ECOSYSTEM」を用意する。ただし、「相応の工期と予算を確保しなければならない」(大友氏)
もう1つは、「6つの“壁”を乗り越えられる機能と性能を備えた製品を選定する方法」(大友氏)だ。該当製品として大友氏は、同社の会議室用音声デバイス「STEM ECOSYSTEM」を挙げる。情報システム部門などにとって“壁”になりやすいオーディオに関する設定などを自動化する。