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- 製造DXの最前線、欧州企業が目指す“次の一手”
仏シュナイダー、工場のスマート化に向けたエコシステムを構築
仏シュナイダー・エレクトリック グローバルサプライチェーン スマートプログラム担当ディレクター シヴァ クマール A 氏
データに基づく意思決定を加速するためにシュナイダーは、アナリティクスやAI(人工知能)技術の活用にも注力してきた。ここ1年に取り組んだ主な施策は大きく3つある。
施策1:インテリジェントビジョン
ディープラーニング(深層学習)により自律的な視覚検査機能を実現する。既存の自動化プロセスに統合すれば、視認検査のプロセスの自動化を高められる
施策2:「メンテナンスアナリティクス」
既存のエコシステムにAVEVA Insightを追加し予兆を解析することで、より高度なメンテナンスを実現する
施策3:スマートオートメーション
AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)などを使って、倉庫や物流センターの業務プロセス効率を改善する
これらの取り組みで、シュナイダーが頼りにするのが「AVEVA Insight」(AVEVA製)である。正確性が高いデータを企業横断で収集・保存・可視化するためのクラウドサービスで、生産拠点で発生するデータに容易にアクセスでき、かつリモートで解析できる。AVEVA Insightについてクマール A氏は、「情報の可視化により、スマートかつ迅速な意思決定が可能になる」と説明する。
スマートファクトリー化を進める4つのポイント
最近は、AVEVAの新サービスの利用にも取り組んでいる。「Vision AI」が、その1つ。AVEVA Insightが持つリアルタイム画像処理技術と連携させることで、検知した異常を担当者に通知するための仕組みの実用化を図る。これにより、「発生する可能性のある障害を可視化し、保守および品質を担うチームに届けられる」(クマール A氏)とする。
さらに、画像のリアルタイムな分析結果とプロセスデータを統合することで、「機械学習によって障害原因になるパラメータを特定し、根本的に品質を改善するための仕組みの構築にも取り組んでいる」(クマール A氏)
そのうえでクマール A氏は、「製造業におけるデータアナリティクスにおいて、データがいかに重要な役割を果たせるかを追求し続けたい」と力を込める。そのためには「単一のプラットフォームで、すべてのアセットデータモデルとプロセスモデルを構築できる必要がある」(同)とする。
単一プラットフォームとしてシュナイダーが活用するのがIoT基盤の「AVEVA PI」だ。「さまざまなデータソースから収集したデータを格納し、データのコンテキストを定義すれば、あらゆるアナリティクスのための信頼できる唯一の情報源が構築できる」(クマール A氏)と期待する。
そしてクマール A氏は、スマート化に取り組むために大事なポイントとして、次の4つを挙げる。
ポイント1 :基準の設定。基準を設定すれば、迅速なスケールアップや機能拡張が容易になる。またデータに対しては、共通言語になるよう標準化を図る
ポイント2 :ソリューションカタログの構築
ポイント3 :入念な展開計画と、その実行のためのリソースの準備。加えて変革の推進を支援するためには、デジタルコンピテンシープランを策定し、必要なリソースを準備し、適切なロールを定義する
ポイント4 :新しいソリューションの導入による効果や価値をトラッキングするための仕組みを設けておく。シュナイダー自身は、「シュナイダーパフォーマンスシステム」を利用することで確実に成果を上げられた
加えて「DXの実現に変更管理計画は欠かせない」とクマール A氏は指摘する。
シュナイダーは今後、スマートファクトリーで推進してきたプログラムを配送センターの変革に適用していく。対顧客に向けては、「顧客のデジタルパートナーとして、持続可能性、効率性の達成に寄与していきたい」とクマール A氏は力を込めた。
クマール A氏による講演動画「いかに工場のスマート化を図るか。その導入と価値創造」をこちらで、ご覧頂けます。