- Column
- 製造DXの最前線、欧州企業が目指す“次の一手”
スイスIMD、製造業も「デジタルディスラプション」への備えを
IMD Global Center for Digital Business Transformation Researcher and Advisor 横井 朋子 氏
問2:あなたの組織にどの程度影響するか?
回答した90%の役員が、「デジタルディスラプションは業界を大きな変化させる影響を与える」と考えており、彼らはまた破壊的な変化の性質を認識している。この5年間に株価指数「S&P500」の対象企業が入れ替わっているように、「今後5年間で業界トップ10の3分の1以上が、デジタルディスラプションによって置き換わる」とも回答している。横井氏は、「現在のような状況が続けば、今後10年の間にS&P500の50%が入れ替わると予測されている」と説明する。
デジタルディスラプションによる大きな影響を実感した企業の割合は2022年に約90%にまで増えた。だが、「それに対しDX(デジタルトランスフォーメーション)に積極的に取り組んでいる企業はごくわずかだった」と横井氏は明かす(図2)。約半数の企業は成り行きを見守る「wait and see」の姿勢を取っており、「デジタルディスラプションを排除する方法を見つけるのに苦労していることが明らかだ」(同)という。
なぜ、デジタルディスラプションへの対応に苦労しているのか。その理由を横井氏は、「DXの取り組みのうち87%が目標を達成できず、失敗に終わっているからだ」と分析する。DXが失敗する理由は、スキル不足や曖昧な目標、組織の変化など、さまざまだが、「中でも技術に焦点を当てすぎていることが最大の理由ではないか」と横井氏は考察する。
問3:会社(組織)に公式なデジタル戦略はあるか?
2020年と2022年の両調査では、デジタル戦略のない組織の割合は17%だった。だが横井氏は、「戦略のあるものの、その導入には苦労していたように見える」と指摘する。
デジタル戦略が、組織全体を対象にしたものなのか、特定の分野を対象にした断片的なものだったのかについては、2020年の調査では半数以上が「断片的な戦略だった」と回答したものの、2022年にはその割合が4ポイント下がっている(図3)。
デジタル戦略は、組織のさまざまな役割の人がイニシアチブをとって進めると、自然発生的に断片的になってしまう。結果、「個人の観点からは正しい戦略でも、組織全体としては重複率が高く、コストと複雑さを増してしまう」(横井氏)。そのため、「徐々にデジタル戦略を合理化しようと改善を図っている企業が増えている」と横井氏は分析する。ただ横井氏は、「断片的な戦略でもデジタル戦略を全く用意していないよりは良い」とも指摘する。
橫井 朋子 氏による講演動画「Digital Vortex:デジタルディスラプションの最新状況と製造業の今」をこちらで、ご覧頂けます。