• Column
  • シン・物流、DXで変わるロジスティクスのこれから

「2024年問題」における長距離輸送の問題を中継輸送で解く【第2回】

鈴木邦成(日本大学教授)、中村康久(ユーピーアール技術顧問)
2024年1月24日

システムの価値を最大化するPDCAサイクルが重要に

 ただし、中継輸送を継続して拡大・最適化をしていくためには、運行管理システムの導入だけでは不十分です。図2に示すように、デジタルプラットフォームが提供する価値を最大限に引き出すためのPDCA(計画・実行・確認・行動)サイクルを確立する必要があります。システム導入以外では次の(1)中継輸送プロセスの標準化、(2)目標KPIの設定、(3)現場研修と環境の最適化が重要です。

図2:中継輸送を実行するためのPDCA(計画・実行・確認・行動)サイクル

(1)中継輸送プロセスの標準化

 中継輸送の方式、トラックの運行ルート、荷役作業などについて、標準的な設定・手順・段取りを取り決めます。物流事業者・荷主間のデータ共有や事業者間でのドライバーの一元管理なども必要になります。併せて、IT端末やスマートフォンなどをドライバーや現場管理者、作業者が大きな負担なく使えるように準備します。

 トレーラー交換方式の場合は、そのための広いスペースも不可欠です。なお、ドライバー交替や車両相互利用については関連企業間で協定を締結するなど必要になってきます。

(2)目標KPIの設定

 目標となるKPI(重要業績評価指標)を設定し、その目標が達成できない場合は、その要因を分析し課題の解決を図ります。

 KPIは、待機時間、荷役業務などにおけるトラックドライバーの労働時間の短縮時間、トラック積載率(積載トン数 ÷ 積載可能トン数 × 100)やトラック実働率(運行日数(時間) ÷ 運行可能総日数(時間) × 100)などの現状値を分析したうえで設定します

(3)現場研修と環境の最適化

 トラックドライバー交替方式以外では、スワップボディの装着スキルや荷扱い情報の引き継ぎの円滑化などが求められます。貨物積み替え方式の場合は、バラ積み貨物の積み替えでは待機時間が長時間化するだけにパレット荷役を標準とし、フォークリフト作業者を現場に配置する必要もあります。

現場での研修と環境の最適化を図る

 中継輸送については、導入事例も増えていますが、デジタル技術を使って業務改革を図るDXの視点からの準備は、これからという企業が多いようです。中継輸送を軌道に乗せるには、採用した方式が必要とする標準化を進め、トラックドライバーの労働時間短縮を念頭にしたKPIの目標値を設定したうえで、どの工程にデジタル技術を導入すると共に、現場での研修と環境の最適化を推進しなければなりません。

 次回は、配送拠点から届け先までのラストワンマイル配送の課題と、その解決策について解説します。

鈴木 邦成(すずき・くにのり)

日本大学教授。物流エコノミスト。博士(工学)(日本大学)。早稲田大学大学院修士課程修了。日本ロジスティクスシステム学会理事、日本SCM協会専務理事、日本物流不動産学研究所アカデミックチェア。ユーピーアールの社外監査役も務める。専門は、物流・ロジスティクス工学。主な著書に『物流DXネットワーク』(中村 康久との共著、NTT出版)、『トコトンやさしい物流の本』『シン・物流革命』(中村康久との共著、幻冬舎)などがある。

中村康久(なかむら・やすひさ)

ユーピーアール技術顧問。工学博士(東京大学)。NTT電気通信研究所、NTTドコモブラジル、ドコモUSA、NTTドコモを経て現職。麻布高校卒業後、東京大学工学部計数工学科卒業。元東京農工大学大学院客員教授、放送大学講師。主な著書に『Wireless Data Services-Technology, Business model and Global market』(ケンブリッジ大学出版)、『スマートサプライチェーンの設計と構築』(鈴木 邦成との共著、白桃書房)、『シン・物流革命』(鈴木邦成との共著、幻冬舎)などがある。