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梱包サイズの標準化が宅配ボックス活用や新たなビジネスモデルにつながる【第19回】

鈴木邦成(日本大学教授)、中村康久(ユーピーアール技術顧問)
2024年10月10日

ラストワンマイルを支える宅配便のデジタル化【第3回】』で述べたように、宅配便業界は不在世帯に対応する「再配達問題」に悩まされています。その解決策の1つに「置き配」があります。ですが、届け先に直接渡していないことによるリスクも顕在化しています。その改善策として期待されるのが「宅配ボックス」です。今回は、宅配ボックスにおけるデジタル活用について説明します。

 宅配便の再配達率は近年、10~15%で推移しています。しかし、さらなる再配達率の低下を目標に不在世帯対策の充実が求められています。再配達率の低下に大きな効果があると考えられているのが「置き配」です。不在世帯の玄関先などに荷物を置くことで配達を完了させる方法です。

置き配のリスクや不安を宅配ボックスが解消

 ただし、置き配には盗難や破損・汚損などのリスクが伴います。確実に届けたかどうかを受け取り人が直接確認できないため後日、トラブルに発展する恐れも少なからずあります。現状では置き配は、不在世帯への再配達の有力な方策ではあるもののベストな対策とは言えないわけです。そこで、今後の改善策として期待されているのが「宅配ボックス」の活用です。

 宅配ボックスは、不在荷物を受け取るために個人宅や集合住宅の玄関先などに設置する鍵付きの設備です。駅などに設置される「宅配ロッカー」もあります。コンビニエンスストアなどでの店舗受け取りと比べ受け取る側の都合で利用しやすく、かつ個人情報も守れることから、置き配に不安を感じる利用者からも支持されています。コロナ禍以降、非対面を含めた多様な受取方法の1つとして採用が広がっています。

 ただ、玄関先に置くだけの置き配では、荷物のサイズに大きな制約はありません。ですが宅配ボックスや宅配ロッカーでは、そうではありません。荷物のサイズにより、宅配ボックスの大きさや、その利用度合いの影響を受けるからです。

 宅配便のサイズは,梱包物の周辺長によって定められています(図1)。一般に80サイズはS(Small)に、100サイズはM(Medium)、120サイズはL(Large)に、それぞれ該当します。

表1:宅配便における「三辺長」の区分の例(ヤマト運輸の宅配便料金表を元に筆者が解説を加えて作成
三辺長重要相当サイズ備考
60cm以内2kgまでSSサイズに相当−−
80cm以内5kgまでSサイズに相当SからLの3サイズで宅配便扱い量全体の約70%を占める(推定)
100cm以内10kgまでMサイズに相当
120cm以内15kgまでLサイズに相当
140cm以内20kgまでLLサイズに相当集合住宅の標準的な宅配ボックスには入らないケースが多い
160cm以内25kgまで相当サイズなし
180cm以内30kgまで
200cm以内30kgまで

 これら3つのサイズの割合が、どの程度かは公表されていません。正規分布が成り立つと仮定すると、3つのサイズで全体のおおよそ70%を占めると考えられます。それゆえ120サイズを超える大きさの荷物を対象にした宅配ボックスは、ゴルフバック対応などを除けば、ほとんど商品化されていないのが実状です。