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共同輸送の効率を物流システムの共同運用でさらに高める【第5回】

鈴木邦成(日本大学教授)、中村康久(ユーピーアール技術顧問)
2024年3月18日

共同物流の充実には情報システムの共有が不可欠

 ただし、こうした共同物流を成立させるためには、各社の競合関係や取扱品目のバランスなど、複雑な成立条件を満たせなければなりません。なかでも共同物流センターでの荷積みや荷卸し、荷捌きなどでは、複数の荷主からの貨物を検品したうえで荷合わせをする必要があり、作業時間が1社単独輸送の場合に比べ長くなる傾向があります。

 実際、加工食品の物流などでは、伝票と荷物を突き合わせる検品作業が納品ごとに発生することが荷待ちの大きな要因だとも指摘されています。検品伝票や外装の表記やルールが統一されておらず、そのために検品時間が長時間に及ぶことがあるためです。これらの課題を解消するためには、社内業務や庫内作業の標準化、物流サービス水準の統一、情報システムの統合などが必要になります。

 例えば、共同配送・集荷を進めていく方向性を打ち出した、ユニ・チャームやライオンといった日用品メーカー/卸は、共同物流センターのための物流システム基盤を共同で構築し、受発注システムを共同運用することで、検品や荷卸しのための作業時間を大幅に削減する計画です。同業界の共同物流戦略は、これまでも物流業界の注目を集めてきましたが、2024年問題などを契機に、従来以上に加速していくとも考えられます。

 共同物流システムをクラウド環境などを利用して構築した例を図2に示します。ここでの「事前出荷情報(ASN:Advanced Shipping Notice)システム」は、電子データ交換(EDI:Electronic Data Interchange)システムと連携し、商品が到着する前に、どの商品が、どれくらい入庫するのかという明細情報(入庫予定日や発注番号、商品コード、数量など)を荷受人に提供します。

図2:共同物流システムの構築例

 ASNは、検品レスのオペレーションにも利用できます。加えて、2次元コード(QRコード)やRFIDタグなどの導入を推進し、検品効率を高めると同時に、納品日に柔軟性を持たせたり、少しでもパッケージがへこんだら受け取らないといった過度な物流品質の管理を改めたりと、業界の慣習を見直す必要もあります。

 このように、共同輸送に物流センターの共同運営を組み合わせることは、トラックドライバー不足解消や物流コスト削減、環境負荷低減など多くの効果を期待できます。

鈴木 邦成(すずき・くにのり)

日本大学教授、物流エコノミスト。博士(工学)(日本大学)。早稲田大学大学院修士課程修了。日本ロジスティクスシステム学会理事、日本SCM協会専務理事、日本物流不動産学研究所アカデミックチェア。ユーピーアールの社外監査役も務める。専門は、物流・ロジスティクス工学。主な著書に『物流DXネットワーク』(中村康久との共著、NTT出版)『トコトンやさしい物流の本』『シン・物流革命』(中村康久との共著、幻冬舎)などがある。

中村康久(なかむら・やすひさ)

ユーピーアール技術顧問。工学博士(東京大学)。NTT電気通信研究所、NTTドコモブラジル、ドコモUSA、NTTドコモを経て現職。麻布高校卒業後、東京大学工学部計数工学科卒業。元東京農工大学大学院客員教授、放送大学講師。主な著書に『Wireless Data Services-Technology、 Business model and Global market』(ケンブリッジ大学出版)、『スマートサプライチェーンの設計と構築』(鈴木邦成との共著、白桃書房)、『シン・物流革命』(鈴木邦成との共著、幻冬舎)などがある。