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WHAT:商品・サービス。D2C事業を通じて何を顧客や社会に届けるのか?【第4回】

堀田 顕人(電通デジタル コマースマーケティング部門コマースデザイン部第1グループ)
2024年5月7日

ブランドの世界観を体現する商品の形状や包材を選ぶ

陳列に左右されずブランドの世界観を出しやすい商品形状

 小売店で販売する商品の形状は、陳列スペースや店舗のレイアウトに影響されることがあります。商品カテゴリーや小売店の属性にもよりますが、店内スペースが限られていることもあり、横に広がらず垂直に陳列しやすい形状が好まれる傾向があります。顧客が商品を手に取りやすく、陳列時に他の商品と容易に比較でき、商品特徴が伝わりやすい形状やデザインが好まれます。

 D2C事業では、商品を顧客に直接発送するため、他社製品と陳列で比較されるようなシーンを配慮する必要がありません。ブランドのアイデンティティに沿った商品の形状やデザインを採用でき、競合他社との差別化を図る手段の1つになります。配送後に商品を開封することも購買体験の一部になるため、商品の形状によって開封時の感動や驚きを演出することが重要です。

ファンづくりのユーザー体験を考慮した包材や同梱物

 小売店での商品は、店舗内での取り扱いや顧客の触れる機会が多いため、包材は商品の安全保護とセキュリティを確保するために重要です。包装がしっかりしていることで商品が傷つきにくく、不正な取り扱いを防げます。商品が店内で目立つよう、包材のデザインやカラーリングも考慮されます。商品の外観が購買意欲を引き起こす役割を担っています。

 D2C事業では、商品を顧客に直接発送するため、包材は輸送時の商品を保護することも重要ですが、顧客の手元に届いた際にブランドの価値観やスタイルを伝える手段としても利用できます。初回購入時、2回目、定期購入時など、長く愛されるブランドになるよう、包材や同梱物のメッセージ・コミュニケーションを通じてユーザーエクスペリエンス(UX:User eXperience)を向上させることが重要です。

 近年は環境への配慮が求められており、環境にやさしい包材の使用が注目されています。リサイクルやバイオデグレード可能な素材を採用するなど、サステナビリティに対応していくことも、ブランドが愛される理由の1つになります。

顧客と直接販売できるからこその価格設定

 商品/サービスの販売価格は、小売業界の競争や流通経路によって影響を受けます。小売店は通常、中間マージンや固定コストを考慮して価格を設定します。

 D2C事業では、中間業者を少なくし、メーカーと顧客が直接取引することが一般的です。これにより、価格を抑えつつ高品質な商品の提供が可能になります。継続的に顧客に利用してもらえるよう、定期的なサブスクリプション(購読)モデルや直接販売などの手法を通じ、最初は顧客にとって利用しやすい金額からスタートするなど、メーカーで自由に価格を設定できます。

 次回は、5W3Hのうちの「WHERE」、すなわち、D2C事業をどのような場所、売り場で展開するかについて説明します。

堀田 顕人(ほった・あきと)

電通デジタル コマースマーケティング部門コマースデザイン部第1グループ。マーケティングやコミュニケーション領域を対象にしたプロジェクトマネジメント専門会社で不動産やスポーツマーケティングなど幅広い業界の大規模プロジェクトを経験。雑貨・文具プロダクトの事業会社ではブランドマネジメントから広報やEC運営、SNSなど集客からCRMまでのコミュニケーション全般における戦略立案・施策実施業務に従事。現在はD2C事業の立ち上げ・事業計画策定からサイト構築、グロース支援などを幅広く担当している。