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WHAT:商品・サービス。D2C事業を通じて何を顧客や社会に届けるのか?【第4回】

堀田 顕人(電通デジタル コマースマーケティング部門コマースデザイン部第1グループ)
2024年5月7日

前回は、D2C事業のための「5W3H」の中でもなぜD2C事業を行うかのパーパスや事業戦略について紹介しました。第4回はD2C事業を通じて何(商品・サービス)を顧客や社会に届けるかの「WHAT」について説明します。

 D2C事業を通じて顧客や社会に届ける商品やサービスは、従来の小売店を通じて提供する商品/サービスとは何が異なるのでしょうか。その問に対し、商品開発や在庫管理・生産、商品形状・包材、価格など複数の視点から解説します。

直接届く顧客の声を生かした商品開発が可能に

 商品開発において、小売店での展開とD2C事業の違いは、顧客とのコミュニケーションから得られた声を商品開発にスピーディーに生かせるか、またその声を改善や個別化に活かせるかにあります。

 小売店は、商品を仕入れ、店舗陳列を通じて販売します。メーカーが市場ニーズを把握しようとしても、一部はリアルタイムに可能だとしても、商品が実際に店頭に並んでから、その後に顧客の反応やフィードバックを得られるまでは時間が掛かりがちです。顧客の声は、小売店からメーカーに必ずフィードバックされるわけではないため、顧客の声を速やかに新しい商品開発や改善に活かすことが難しくなります。

 一方でD2C事業は、オンラインでの直接販売を通じて、顧客の意見や要望を素早く取得しやすい環境下にあります。自社のEC(電子商取引)はサイト上のレビューやSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)上での自社商品への反応・要望などのフィードバックを抜け漏れなく、かつスピーディーに収集することで、商品開発や改善に活かす流れを構築できます。

 さらに、商品に対する顧客の声を聞くことにより、顧客ごとの好みやニーズ、課題に合わせて特定の商品やサービスをカスタマイズでき、個別化された体験の提供が可能になります。

在庫リスクを軽減し需要にスピーディーに対応する

 小売店を通じた販売の場合、在庫管理や生産管理においてリスクを抱えてしまうことや、スピーディーに対応しにくいといった課題があります。これらの課題を解決するためにD2C事業では、次のような在庫管理や生産管理が実現できます。

在庫リスクの軽減

 小売店での販売では大量に仕入れることが一般的で、商品が売れ残ると在庫リスクが生じます。在庫過多になれば、セールや割引を実施し、在庫を早期に消化しようとする傾向があります。

 D2C事業では、小ロット生産や販売、受注管理が直接行えるため、ストックを抱えずに商品/サービスを提供でき、在庫リスクを最小限に抑えられます。

需要をリアルタイムで把握し、スピーディーに対応

 小売店は通常、過去のデータや季節変動など一定期間の販売データを基に需要を予測し、商品を発注したり補充したりしています。在庫が底を突けば、仕入れ先との調整や再発注が行われますが、その情報の伝達に時間がかかる場合があります。

 D2C事業では、流通を介さず自社で直接販売しデータを管理するため、リアルタイムな在庫管理が可能です。需要の変動に敏感に対応し、特定の商品が不足しないように在庫を調整できます。