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WHERE:売り場づくり。販売に加え顧客データを収集しコミュニケーションできる場が重要【第5回】

堀田 顕人(電通デジタル コマースマーケティング部門コマースデザイン部第1グループ)
2024年6月3日

自社ECでの種々の施策が顧客満足度や販売機会を高める

 自社ECでは、顧客満足度の向上と販売機会・収益の最大化を実現できます。具体策としては、顧客体験のパーソナライズ化や、SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)との連携、オフラインを統合したユニファイドコマース、ビッグデータのリアルタイム分析、AI(人工知能)システムとの連携などがあります。

顧客体験のパーソナライズ化

 顧客の個人情報のほか、過去に購入した商品/サービスや購入前の閲覧、カートへの保存情報に基づき、関連性・類似性の高い商品の提案や、特定の商品/サービスに関連した特典やプロモーションを提供します。お薦め商品の表示だけでなく、顧客の誕生日や結婚記念日などに、割引クーポンや特典ポイントなどを提供することも可能です。顧客の興味・関心や属性に合わせて、メールマガジンやブログ記事、特集記事などのコンテンツを配信・表示します。

SNSとの連携

 SNSとの連携は、自社ECサイトへの集客や購買、顧客エンゲージメントを高めるために重要です。集客においては、さまざまな施策があります。ターゲット顧客層に向けたSNS広告のほか、自社ECサイトの商品やコンテンツを紹介する投稿を公式SNSで定期的に発信し、その投稿に自社ECサイトへのリンクを設定することで、SNSからのトラフィックを増やします。

 SNS上で影響力のあるインフルエンサーと提携し、自社ECサイトの商品やブランドを宣伝・紹介してもらうことで、インフルエンサーのフォロワーからのトラフィックを増やせます。

 購買では、ライブストリーミング販売やショッピング機能の活用が挙げられます。SNS上でのライブストリーミングにより、商品のデモンストレーションやライブ販売を行います。顧客とのリアルタイムのコミュニケーションを通じて、商品への関心を高めます。FacebookやInstagramなどのSNSプラットフォームのショッピング機能を使って、自社ECサイトで販売している商品を直接SNSプラットフォーム上で販売することができます。

 顧客サポートとしてSNSを活用することも重要です。公式SNSアカウントからの返信やダイレクトメッセージといった方法で直接コミュニケーションを取れば、顧客の問い合わせや問題解決に迅速に対応し、顧客満足度の向上とブランドの信頼性を高められます。

ユニファイドコマース

 ユニファイドコマースとは、企業が複数の販売チャネル(自社EC、実店舗、モバイルアプリなど)を統合し、顧客がシームレスな体験を得られるようにすることを指します。顧客がオンラインや店舗、アプリで購入した商品/サービスに関する情報を一元管理し、購買履歴や好みに応じてパーソナライズした一連の体験やマーケティング施策、販売施策を提供します。

 例えば、店舗が広くて商品が探しにくい場合はアプリがコンシェルジュ的な役割を担い、配送が必要な商品であれば店舗で実物を確認した後に自社ECで購入することができます。アプリや店舗での行動・来店履歴を収集・分析し、顧客ごとのキャンペーンやクーポンなども配信できます。

 ほかにも、顧客がオンラインや店舗での購買に関するサポートを統合し、顧客の問い合わせや問題解決に迅速かつ効果的に対応します。これらにより、顧客に対して一貫したブランド体験を提供するだけでなく、企業にとっても販売機会の最適化や顧客満足度の向上などのメリットが得られます。

ビッグデータとリアルタイム分析

 顧客がサイトを閲覧している際、その時点での行動や購買履歴などに基づき、最適な商品をリアルタイムに推薦することで、顧客の興味を引き付け購買意欲を高められます。

 サイトでの売り上げデータやトランザクションデータ(ページビュー、クリック、購買履歴など)などをリアルタイムに分析し、売り上げ動向や顧客の購買行動を把握すれば、需要の変化に即応してセールス戦略を調整することが可能です。

 ほかにも、マーケティングキャンペーンやプロモーションの効果をリアルタイムに分析し、キャンペーンの成果や収益性を評価します。キャンペーンの効果的な運用や予算の最適化が図れます。

 企業側の視点では、在庫状況や販売動向をリアルタイムにモニタリングし、ビッグデータ解析によって将来の需要を予測します。それに基づいて在庫レベルや製品の製造・調達計画を最適化し、在庫の過不足を防ぎます。セキュリティログやトランザクションデータをリアルタイムに監視し、不正なアクティビティや詐欺行為を検知します。特に迅速な対応が重要なため、リアルタイム分析は不可欠です。

AIや機械学習の活用

 今後は、ECサイト領域でもAI技術や機械学習の活用が増えてくると考えられます。顧客に対してはパーソナライズの精度向上が期待でき、企業視点では在庫予測やレビュー・フィードバック分析など多岐にわたる領域で活用が見込まれます。

 次回は、5W3Hのうちの「WHEN」、すなわち、D2C事業を推進するうえでの事業計画、スケジュール管理について説明します。

堀田 顕人(ほった・あきと)

電通デジタル コマースマーケティング部門コマースデザイン部第1グループ。マーケティングやコミュニケーション領域を対象にしたプロジェクトマネジメント専門会社で不動産やスポーツマーケティングなど幅広い業界の大規模プロジェクトを経験。雑貨・文具プロダクトの事業会社ではブランドマネジメントから広報やEC運営、SNSなど集客からCRMまでのコミュニケーション全般における戦略立案・施策実施業務に従事。現在はD2C事業の立ち上げ・事業計画策定からサイト構築、グロース支援などを幅広く担当している。