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WHERE:売り場づくり。販売に加え顧客データを収集しコミュニケーションできる場が重要【第5回】

堀田 顕人(電通デジタル コマースマーケティング部門コマースデザイン部第1グループ)
2024年6月3日

前回は、D2C事業のための「5W3H」の中でもD2C事業を通じて何を提供するかの商品/サービスについて紹介しました。第5回はD2C事業を、どこの売り場で顧客や社会に届けるかの「WHERE」について解説します。

 D2C事業を通じて顧客や社会に商品やサービスを届ける際、既存の小売店ではなく、インターネット上の売り場として自社EC(電子商取引)サイトやAmazon、楽天といったモールECを利用します。それぞれの特徴を踏まえながら、自社ECサイトが多く採用されている背景や最近動向について説明します。

自社ECではブランドコントロールやデータに基づく顧客との直接対話が可能

 モールECは、そこには既に数百万人超のアクティブユーザーが存在し、比較的早期の集客が可能です。商品の流通や物流に関するインフラが整っており、効率的な配送や返品処理などのサポートも受けられます。新規集客やロジスティクスの支援を受けることで、時間をかけずに売り上げの成果を出せます。ただ、モールEC内での顧客の行動履歴や購入履歴などの詳細なデータを取得できないことがあります。

 一方の自社ECでは、サイトの企画構成やデザイン、UX(User eXperience:顧客体験)、マーケティング戦略などを自由に決められ、自社のブランドイメージやUXを完全にコントロールできます。顧客の行動・購買履歴などの詳細データを収集し、効果的に活用すれば、顧客一人ひとりに合わせたレコメンドのほか、直接的なコミュニケーションによる迅速かつ柔軟な対応が可能になり、ファンづくりや長期の関係構築が期待できます。

 売り上げ面では、モールECに比べると集客に時間と費用投資がかかる傾向があるため、すぐに成果を出すことは難しいですが、時間をかけて顧客を増やしていくことで収益が増大します。モールECのように販売に伴う手数料がないため、売り上げの一部を手数料として外部に支払う必要がなく利益を最大化できます。

 D2C事業においては、自社EC、もしくは自社ECを中心に一部モールECを採用する傾向が見られます。収益を作る売り場としてだけではなく、顧客データを取得・蓄積し顧客との直接的なコミュニケーションや、上述したような自社ECのメリットを最大限享受したいのが、その理由です。