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  • 富士フイルム流・ブロックチェーン技術を用いた情報基盤「DTPF」の作り方

富士フイルムグループのDX戦略と“トラストファースト”な情報基盤「DTPF」の価値【第1回】

杉本 征剛(富士フイルムホールディングス)、高橋 正道(富士フイルム)
2024年4月15日

富士フイルムグループは、グループ共通の「DX(デジタルトランスフォーメーション)ビジョン」を掲げ、さまざまな事業のグローバル展開を進めている。そのための情報基盤として「DTPF(デジタルトラストプラットフォーム)」を開発・運用する。DXビジョンと、そこでのDTPFの位置付けについて解説する。

 富士フイルムグループにとって、デジタル化やDX(デジタルトランスフォーメーション)は近年浮上したテーマではない。数十年にわたり常に重要課題であり、日本で「DX」がキーワードとして認知されるより前から、デジタル化による急激な社会変化に向き合ってきた。

 特に2000年代に入ってからは、デジタル化の急速な進展に伴い、当社事業をけん引してきた写真フィルムの需要が急減するという創業来の危機に直面した。そこから「第二の創業」を旗印に、IT(情報技術)やAI(人工知能)技術の活用による事業構造の転換による収益拡大を図っている。例えば、デジタル技術を活用した医療機器などを提供するヘルスケア領域の売上比率は2000年度から約3倍に拡大している。

社会課題の解決と収益性の高い事業の両立を目指す

 DX推進に当たり、富士フイルムグループの共通指針「DXビジョン」として、「イノベーティブなお客様体験の創出と社会課題の解決」と「収益性の高い新たなビジネスモデルの創出と飛躍的な生産性向上」を掲げている。その遂行を「DXの行動規範」と「DX基盤」が支える(図1)。

図1:富士フイルムグループのDXビジョンと、それを支える「DXの行動規範」と「DX基盤」

 DXの行動規範としては、「人の知恵とデジタルの高い次元での融合」を念頭に、(1)デジタルで表現、(2)トラストの実現、(3)現場間連携の3つを挙げる。

(1)デジタルで表現 :顧客や業界と富士フイルムの現場の間、富士フイルムのあらゆる現場の間にある業務をデジタルで表現する。「デジタルで表現」とは、プラットフォーム上で利用可能な状態を指している

(2)トラストの実現 :顧客や業界の現場で求められる“トラスト”をデジタルプラットフォームで実現する。具体的には、業務の品質や安全を担保する検証と制御可能性の向上である

(3)現場間連携 :顧客や業界と富士フイルムの現場の間、富士フイルムのあらゆる現場の間にある業務を適正に連携し、双方の満足度を高める

 行動規範で特に重視しているのが「現場起点・現場主導」と「プラットフォーム指向」の2点である。

現場起点・現場主導

 経営のガバナンスを効かせながらも、従業員1人ひとりがDX人材に成長し、能動的に行動することで現場業務を変革する。変革により創出された時間は、顧客やパートナー企業のニーズ分析や、製品やサービスの質の向上に利用し、顧客やパートナー企業の現場に届けられる価値が大きくなるという好循環を生みだす(図2)。その実現に向けて、マテリアルやバイオ、プロセス、経営など、さまざまなインフォマティクスを活用する。

図2:現場起点・現場主導によるDX推進の概念

プラットフォーム指向

 自社あるいは他社が開発する共通機能を柔軟に組み合わせ多様な用途を実現するプラットフォーム型開発に変革する。プラットフォームは、どの事業・現場でも使えるレゴブロックのような部品の集合体のイメージだ。多くの共通部品の上に事業・現場の個別ニーズに対応した個別部品を開発すれば、高品質な製品やサービスを素早く低コストで提供でき、市場での競争優位につながると期待する。

 従来は、事業ごと、ユニットごと、業務プロセスごとに、特定用途に向けた専用機能を垂直統合するコンポーネント型開発だった。そこでは1つのアプリケーションを開発するために多大な時間とコストを要する。サプライチェーン全域における抜本的変革が求められるDXに、1種類のITツールで対応することは極めて困難であり、グローバルな競争力の向上にはつながらない。

 一方、DX基盤は、(1)製品・サービス、(2)業務、(3)人材の三本柱と、その土台になる(4)柔軟かつ強靭なITインフラで構成する。